兄を求めて 31 ページ33
オスマンside
俺は目を覚まし、おデコには暖かくなったおしぼりが乗せられていた。
このしわしわした感じ...ゾムがやってくれたんかな、なんて思い、患者ベッドから降りる。
sn「あれ、もう大丈夫なん？」
『大丈夫、熱もないやろし』
俺はそう言って、桶を洗いに行く。
sn「あ、シャス記憶戻したで」
『っ、』
ペ神のその言葉に俺は過剰反応する。
sn「やっぱ、オスマンがお兄ちゃんだってことは知らないっぽいな」
『...やっぱな』
俺はあわあわにしたスポンジで桶を洗いながら、言葉を綴る。
『アイツはもっと、生きるべきなんや。』
sn「...オスマンが兄だって知らせないつもりなんやろ？」
ペ神は椅子をこちらに向けた。きっと、目を細めながら笑っているのだろう。
sn「...彼女の本当の幸せと彼女の本当の未来、どっちを優先させたいん？」
『...もちろんシャスの幸せや...！でも、でも...！俺が兄だと知った瞬間、シャスは死ぬ...！！
...俺だって、俺だって寂しいんや...！！！』
...あわあわになった手に、暖かい涙を落とす。
目の前が歪んでは、目尻に重みを感じて...。
sn「...彼女は、［幸せ］を［努力］と見とる。幸せを感じるには、努力が必要やろ？...幸せには、不幸もついてくる。そんな感じで、幸せには努力がついてきて、努力には幸せがついてくる...」
彼女はお前を求めて、沢山歩き回って、血肉をかき分けて探してきてん。
...そう言ったペ神の言葉を聞き、桶の泡を流す。
流れゆく水は、なんの心残りやろか。
いつになっても綺麗にならない俺の心は、どうすれば綺麗になるんや。
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作者名：扇@リョク | 作者ホームページ：uranai.nosv.org/u.php/novel/usiro_member/
作成日時：2018年6月17日 14時
