レイニーデイ2 【影山飛雄】

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ベットに思い切りダイブする。
放り出された携帯電話を、
何度も新着メールが無いかを確認したけれど、
決まって毎回、メールは0件だった。


「世の中そんなに甘くはないよね、」


ため息をつきながら、勉強机に腰掛け、
中学の時の卒業アルバムを手に取る。
ページをめくれば、
らっきょ頭の金田一君も、
金田一君とよく一緒にいた、前髪をセンターで分けていた人もいた。


「あ、影山君だ」


そこには、
あの眉間に皺の寄った、
"影山 飛雄"も載っていた。
少しだけ、高校に入って大人びただろうか、
いや、そんな少しの変化さえないかもしれない。


「あ、懐かしいわね、卒業アルバム。」


どこか微笑ましそうにアルバムを見つめる母。
もしかして、私が影山君のことが好きなのが、
バレているのかなぁと焦った。


「……この子がAの好きな人？」
「……、」


私の頭を撫でる。
やはり、母にはお見通しだった。


「どんな人？」
「努力家な人だよ、
でも、怒ったら結構怖いの。
こう、眉間に皺が寄って……。
それから、」


携帯電話のバイブが鳴る。
机の上に置いてあったそれは、新着メール、と表示していた。
わっ、と勢いでその携帯電話に飛びつく。


「……影山君だ、」


"影山 飛雄"と表示されたそのメールに、胸が高鳴る。
連絡する、というのは本当だったんだ。
ただの社交辞令だと思っていた。
嘘じゃなかったんだ。


「……まぁ、恋に悩むのはいいけれど、
しっかり勉強もして頂戴ね？」


閉められたドアの音なんて聞こえない。
自分の鼓動の音だけが聞こえて、
指先に力を入れて、画面に触れる。


一行一行、見落とさないように、
神経を尖らせて見つめる。
件名に、"影山です"と書いているあたり、
彼はもしかすると、几帳面なのだろうか、とも思ったりした。


"メールしてみた。
潮崎さんまだ寝てない？
今日も部活、お疲れ様"


短くて、絵文字もない素っ気ない文章。
でも、それでも、
"影山 飛雄"と表示されるメールが来ることが、
本当に嬉しかった。


急いで返信を考える。
普段、面と向かってだと、
緊張してあまり話せないから、
せめてメールくらい、頑張ろう。


ゆっくり、丁寧に文章を考える。
たった3、4行の返信に、15分も費やした。
送信完了、と出た画面を見ると、
ひどく疲労感に見舞われた。


「宿題、明日学校でやろう、」


ベットに寝転がって、
携帯電話を握りしめた。


新着メールのお知らせは、0件だった。


『カートデイ』

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