レイニーデイ2 【影山飛雄】

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ゆっくりと振り返ると、そこには傘をビニール傘を持った影山君がいた。
どうして居るのか、
どうしてこんな時間に、
なんて言いた気な顔をしていた。
しかし、生憎それは私も同じ。


「か、影山君、」
「あ、おはよう……ございます、」
「おはよう、ございます……？」


二人揃って状況が飲み込めないまま、口をパクパクとさせてぎこちない他人行儀な挨拶をした。
何、おはようございますって。
まるで少し前の私たちに逆戻りしたようじゃないか。


「てか！潮崎さん！なんで居るんスか！？」
「え！今日遊ぶ約束してた……よね！？」
「そうじゃなくて！」


何かを伝えたいのだろう、
身振り手振りを大袈裟に、眉間に皺を寄せて焦ったような顔した。
私としても、まだまだ待ち合わせの時間までは20分ほどあったわけだし、
まさかこんなに早く彼が駅に居るなんて思っていなかった。


「なんでこんな早いんスか、」
「えっと、朝起きたの早かったから……。
影山君もなんでこんなに早いの？」
「お、俺は、
……俺も早く目覚めただけだ、」
「そっか、」


本当は、今日のことが楽しみすぎて寝付けなくて、
あまりにも早く起きてしまったから。
なんて、言えない。


まだスポーツショップの開店まで15分はある。
この気まずい15分をどうやって過ごそうか。


にしても。
影山君がお洒落さんであるのが少し意外だった。
自分で服なんて買いたいとか、そういう欲はないだろうし、
服を選ぶ時間があるならバレーをしたい、なんて言いそうだし。
もしかして、親御さんが買ってくれたのを着てるだけなのかな？
でも、それにしても想像以上にお洒落で、様になっていた。


「影山君ってお洒落なんだね。」
「え？あぁ………これは俺が選んだわけじゃねーし……」
「そうなの？」
「及川さん……青城のセッターの先輩に、選んでもらった、」
「仲良いんだ、あの人と。」
「良くはないだろ、あの人俺のこと嫌ってると思うし。
でも、そういうことはあの人に聞けばなんとかなるから、」


だって、服なんか着れればどうでもいいし。


ぶっきらぼうに尖った口元から吐き出されたその言葉を背に、
彼は少しだけ頬を赤らめた。
はて、どこにそんな要素があっただろうか、とは思ったが、
きっと彼は彼なりにいろいろあったのだろう。
だってどう足掻いても、あの先輩の脳裏には私の知らない3年分の、はたまたそれ以上の彼の姿があるのだから。


『格好つける日』

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