レイニーデイ2 【影山飛雄】

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酷く疲れる朝練を終えて、これからの授業に向けて気怠げな身体を震わせ、
そそくさと着替える。
日向と王様は、何やら言い合いをしていた。


「あれ？ツッキー、ロッカー、凹んでない？」
「え？………あ、本当だ。」


しん、と辺りが静かになって、少しだけ戸惑う。
凹んだところで、使えないわけじゃあない。
特に気にも留めなかった。


「おい、なんだよ、
お前、さっきから様子変だぞ？」


騒いでいたはずの日向達が急に静かになる。
いや、むしろ急に王様がしおらしくなった。


「は？なんでもねぇ、し。」
「何？お前、情緒不安定なの？」
「あぁ！？」


言葉遣いに覇気はあるものの、
どこか挙動不審で、何かを隠しているようだった。
周囲を見渡した際に、目が合った。
一瞬だけ、交わったそれは、すぐに逸らされた。


「何？」
「…なんでもねぇし。」


はたまたハッタリか。
はたまたカマをかけるのか。


「もしかして、僕のロッカー凹ませたの、王様？」
「はァッ！？」


すっ、と血の気が引いて行く王様の顔に、
酷く笑いが込み上げそうになる。


「何？図星なの？」
「んぬん、」
「はァ？」


「悪い、」


素直に謝罪の言葉が出てきたことに、目を丸くする。
てっきり、その高すぎるプライドゆえに、謝罪なんて無いと思っていた。


「イライラして叩いたら、凹んだ。
悪気はねぇ。」
「自分の叩きなよ……」
「んだよ、仕方ねぇだろ。」


山口は着替え終わったようで、床に積まれた雑誌を読んでいる。
日向は、まだ着替え終わってさえいなかった。
それなのに、その行為を止めて話に寄ってくる。


「影山、何に怒ってたんだ？」
「……別に。」
「俺も気になる！」
「……なんでもないっス」


菅原さんまでもが悪ノリし、収集がつかなくなる。
澤村さんも、やれやれ、と言った感じで、特に咎める様子はない。
王様の眉間の皺は、より深く刻まれた。


「もしかして影山君は、潮崎さんと喧嘩したんですか？」


咄嗟に日向の頭を鷲掴みする。
ああ、痛そうだ。


「潮崎さん、」


ふと小さく無意識に呟いたその言葉。
運良くその言葉は騒音の中に消えてしまった。


「何？」
「なんでもないよ、ツッキー。」


眉を困ったように下げて、心配気にこちらを見つめる彼に、
聞かれていただろうか、なんて羞恥に囚われた。


まあ、聞かれていようと聞かれていまいと、
きっと彼にはもう、
お見通しなのだろう。


『ライバルリーデイ』

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