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夜道は暗くて、視界が悪い。
住宅街に入れば、それぞれの電気のもれた光で、
少しだけ彼の表情が読み取れた。


車のクラクションが鳴って、私たちの横を通り過ぎる。
さすがにこの時間、なおかつ田舎だからか、
車の通りは少ない。
しかし、こういう風にときたま車が通るから、
少し注意しないといけない。


「影山君?」


不意に彼が移動して、私の反対側の隣に立った。
彼の顔を凝視する。
彼もキョトンとした顔で私を見つめた。
彼が左に居たはずなのに、今は右にいる。
なぜだか凄く違和感があった。


彼の足元を見つめる。
長い脚は、心なしかゆっくりと動き、
まるで私の歩幅に合わせてくれているようだった。
なんだそれ。


「うおっ、」


ライトが眩しすぎるほど光って、
彼が思わず目を背ける。


「あっぶねぇな、」


きっと、私を歩道側に寄せてくれたのだろう。
これも、歩幅を合わせてくれるのも、
彼なりのささやかな優しさなのだろう。
おそらく本人の様子からして、
それが特に優しさのある行為だなんて、思っていないのかもしれないけれど。


「あ、私、こっちだから、」
「え、そうなんスか、」
「えっと、じゃあ、」
「……また明日、」


少し名残惜しかったけれど、
もう夜遅いし。
彼に背を向けて、家路を急いだ。
入り組んだ住宅街を進む。
時折そびえ立つ蛍光灯が、
眩しいほど辺りを照らした。
どうせなら、影山君といる時に照らしてくれたら良かったのに。
そしたら彼の表情が、もっと読み取れたのに。


「……潮崎さん!」


彼のハスキーボイスが耳に入る。


「えっと、その、」


ずんずんと歩いて近づいてくる。


「……送ります」


彼の大きな手が私の腕を掴む。
一瞬で思考回路が全てショートして、
口をパクパクとさせた。


「えっ!?
いや、大丈夫!
大丈夫だよ!もう遅いし!
影山君も疲れてるだろうし、
本当、悪い、か、ら……」


ここで、もっと可愛げのあることを言えたら。
ここで、素直に気持ちを表せたら。
どんなに幸せだろうなんて、
考えてもキリがなかった。


「送ります」


彼が掴んだ右腕は、密かに熱を帯びた。
その黒い瞳が私を捕らえて離さない。
何度も送ります、と呟き続ける彼に、
泣きたい気持ちになった。
自分は素直じゃなくて、
可愛いことなんて何一つ言えないのに。


「……ありがとう、」


精一杯振り絞った言葉は、
誰にでも口にできる、
何の変哲もない言葉だらけだった。


『代わり映えのない日』

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設定タグ:影山飛雄 , ハイキュー!!   
作品ジャンル:アニメ
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mono(プロフ) - さくらまめさん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです。できるだけ皆様に納得していただけるような、素敵な展開にしたいです!パート3でも宜しくお願いします! (2014年11月17日 23時) (レス) id: ae3790c4ff (このIDを非表示/違反報告)
mono(プロフ) - 湖々さん» コメントありがとうございます。長かったようで短かったです!笑 納得のいく可能な限り最大限のエンドにしていきたいです!そう言っていただけて嬉しいです。パート3でもお待ちしています!宜しくお願いします! (2014年11月17日 23時) (レス) id: ae3790c4ff (このIDを非表示/違反報告)
mono(プロフ) - 真夜花@影山厨さん» コメントもありがとうございます!本当に素敵なイラストで、嬉しすぎでした。そう言っていただけて嬉しいです。ぎこちない2人ですが、今後とも見守っていただけると嬉しいです。パート3も宜しくお願いします! (2014年11月17日 23時) (レス) id: ae3790c4ff (このIDを非表示/違反報告)
さくらまめ - パート2お疲れ様でした!!monoさんが書かれるもどかしい二人、いきいきしているサブキャラたちが大好きです!これからも応援しています!パート3も待ってます(*^_^*) (2014年11月17日 20時) (レス) id: 50383f2ae3 (このIDを非表示/違反報告)
湖々 - いよいよパート3ですね!!どんな風に展開するのか楽しみです。更新無理せず頑張ってくださいね、もちろんパート3も愛読させていただくと思います、笑 (2014年11月15日 8時) (レス) id: cdc5b89ea9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mono | 作成日時:2014年8月7日 21時

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