レイニーデイ2 【影山飛雄】

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「見ててイライラする。」


空いた席に、どすんと座り込む。
彼女たちの飲みかけのジュースパックが、少しだけ揺れた。


「私だって。


苛々するよ。」


数学の宿題をしながら会話する。


「行ったら、もっと接点が増えるのに、って。
自分でも不思議。」


周りを見れば、
月島君と私しかいなかった。


「山口君と一緒じゃないんだ。」


返答はない。


「月島君は宿題やった？
私、するの忘れちゃって。」


「………潮崎さんってさ。」


何の問いにも答えなかった月島君が、
おもむろに口を開く。


「意外と、頑固、だよね。」
「え？」
「だって、絶対に彼女たちと、王様のところには行かない。
結局は、損してるだけだけど。」
「う、」


核心をつかれて、言葉を失った。


「……一緒に思われたくないんでしょ？」


少しだけ笑いながら、口を開く。


「誰にでも媚びるおちゃらけた彼女たちが、
本当はコンプレックスなわけだ。」
「……違う、」


黒髪を垢抜けない、と言われた時。
影山君のことを貶された時。
男目当てのマネージャーと言われた時。
先輩を引っ掛ければいいと言われた時。


「君の居場所は、そこじゃないんじゃないの。」


確かに、腹が立つことはある。
しかし、彼女たちとの日々が無駄なものかと言われれば、そうではない。


「君にはさ、合ってないんだよ、
不特定多数に手を出す、校則違反をする、
そんな人たちと、君は合ってないんだよ。」


予鈴のチャイムが鳴った。


「別に、それが悪いってわけじゃない。
真面目のフリする方が、タチが悪いかもしれない。
でも、君には合ってないんだよ。」


ヘッドホンを手に、立ち上がる。


「………でも、私、満足してるから。」


彼女たちが話をしながら教室へ入って来るのが見える。
その中に、影山、というワードがあるのも、気付いている。
そして、羨む自分がいること、それすらも、
見て見ないフリをした。


「あとさ、そこの3番の問題、


間違ってる。」


え？と声をあげた先に、月島君はもういなかった。


彼女たちとの関係をとるべきか、
自分の気持ちを優先すべきか。
きっと、ドラマとかそんな世界だったら、
後者を迷いなく選んで、
結局どちらも手に入る、なんて未来があるのだろうけれど。
今の私がどちらを選ぼうと、
失うものは同等なんだろうな。
そんな気がした。


そして、私にはまだその覚悟が無いわけだから、
尚更"タチが悪い"のだろう。


『直感の日』

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