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体力テストでも見せたことのないくらいのスピードで、
通学路を走り抜ける。


「なんで今日に限って寝坊……」


せっかく親が作ってくれた弁当も、
鞄の中できっと、跡形もなく崩れているだろう。
今日のおかず、唐揚げだって聞いていたから、
朝から上機嫌だったのに。


通学路、全てを走るのは相当な体力を消耗するようだった。
信号に行く手を阻まれ、
幸か不幸か、
膝に手をついて束の間の休息を味わう。
しかしそれは、心臓を、両脚を、駆使した身体を、より一層疲労させるだけで、
何の意味も成さなかった。


後ろから足音がして、ゆっくりと振り返る。


「潮崎さんじゃねーか!」
「あ、田中、さん、」


途切れ途切れの言葉を紡げば、大層驚かれたが、
私の腕時計の針が指す数字を見せれば、
少しだけギョッとした顔になった。


「間に合い、ます、かね、…」
「大丈夫…だろ?」


信号が青に変わり、
田中さんは走り出そうとしたが、数歩踏み出して、
すぐに後ろを振り向いた。


「荷物!」
「え、?」
「荷物貸せって、持ってやるから!」


私の肩からするりと鞄を取り上げ、走って行った。


「田中センパイ!!」


機嫌良さげな顔で振り向く田中さんに、
私は少し、微笑んだ。



清水さんについての歌らしきものを口ずさみながら、
田中さんは体育館のドアを開けた。


彼らは、日向君のレシーブの練習をしていたようだ。
長い間続いたそれに、
走って来たばかりの私は、
日向君の顔を見ているだけで、
先ほどの苦しさが喉元を通って、
何度も息苦しさを覚えた。


レシーブの投げ方とは違う、
少し柔らかめの音が体育館にこだまする。
ふんわりと宙へ浮かんだそれは、
彼の前の頭上へと飛んで行く。
一瞬、あのオレンジ色が、
体育館の蛍光灯と重なって、光った気がした。


今、あの瞬間に、
彼があげたのが、
彼がしたあの行為が、


いつの日かチームメイトに、
"最悪だ"と名付けられた、
"トス"、であるというのは、
私でさえ理解できた。


尊敬とも、敬慕ともつかない、
形容し難い感情が、私の中を渦巻く。


「、潮崎さん!」


彼が駆け寄ってくる。


「あ、えと、おはよう、」
「おス、」


目の前に、彼はいた。
先ほどのボールを持った、彼がいた。


「影山ー、女子相手に、おス、はだめだろ!」
「田中のアドバイスなんて真に受けるなよー!」


遠くて近い。
近くて遠い。


「……かっこいい、なぁ。」


ただただ、純粋に。


『アクションデイ』

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設定タグ:影山飛雄 , ハイキュー!!   
作品ジャンル:アニメ
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mono(プロフ) - さくらまめさん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです。できるだけ皆様に納得していただけるような、素敵な展開にしたいです!パート3でも宜しくお願いします! (2014年11月17日 23時) (レス) id: ae3790c4ff (このIDを非表示/違反報告)
mono(プロフ) - 湖々さん» コメントありがとうございます。長かったようで短かったです!笑 納得のいく可能な限り最大限のエンドにしていきたいです!そう言っていただけて嬉しいです。パート3でもお待ちしています!宜しくお願いします! (2014年11月17日 23時) (レス) id: ae3790c4ff (このIDを非表示/違反報告)
mono(プロフ) - 真夜花@影山厨さん» コメントもありがとうございます!本当に素敵なイラストで、嬉しすぎでした。そう言っていただけて嬉しいです。ぎこちない2人ですが、今後とも見守っていただけると嬉しいです。パート3も宜しくお願いします! (2014年11月17日 23時) (レス) id: ae3790c4ff (このIDを非表示/違反報告)
さくらまめ - パート2お疲れ様でした!!monoさんが書かれるもどかしい二人、いきいきしているサブキャラたちが大好きです!これからも応援しています!パート3も待ってます(*^_^*) (2014年11月17日 20時) (レス) id: 50383f2ae3 (このIDを非表示/違反報告)
湖々 - いよいよパート3ですね!!どんな風に展開するのか楽しみです。更新無理せず頑張ってくださいね、もちろんパート3も愛読させていただくと思います、笑 (2014年11月15日 8時) (レス) id: cdc5b89ea9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mono | 作成日時:2014年8月7日 21時

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