もう一度、抱きしめたい。【TH】 (ページ1)

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ーー大学入学式。

「あっつ…」

4月にしては気温の高い陽気に、俺はネクタイの結び目を緩めながら言った。隣で、俺と同じく黒のスーツを身に纏ったジミナが苦笑する。

「こら、テヒョナ。式が終わったからってリラックスモード入りすぎ」
「だって、スーツって固っくるしいじゃん…俺、ニガテ」

言いながら、ワイシャツのボタンも外す。ここが、式が終わった学生でごった返す道中じゃなければ、気温も一・二度下がったかもしれない。

「それにしても、凄いね、人…。サークルの勧誘だと思うけど」
「うん…あー、早くスタバ行ってフラペチーノ飲みたい」

今は兎に角、サークルよりもこのむさ苦しさをどうにかしたかった。が、隣のジミナがそれを許してはくれない。

「いいじゃん、ちょっと聞いてこうよ。サークルお前も入るでしょ？」
「そりゃ何かには…でも、別に今決めなくてもいいじゃん。俺、ぶっちゃけ何でもいいし」

俺が文句を言っても、ジミナは聞こえていないフリをして俺の腕を掴んで進む。ジミナはこうなった以上聞く耳は持たないので、俺はもう黙って連れて行かれることにした。

暫く無の境地で人混みを歩いていると、こちらを見てキャーキャーと騒ぐ女の子たちの姿に気付いた。

殆ど同じスーツを着た新入生だけど、中には私服の人もいる。

…サークルの勧誘に来た先輩かな。