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『…ん？』
ナミの意味深な言い回しに、思わず腑抜けた声が漏れる。
「奴らの周りにいつも誰かしらが居るのは、恐怖政治によるものでは無いってことよ」
デザートに持ってきたであろう蜜柑をひと房摘み、ナミはそれを口に放り投げる。
「そうね。
あの子たちのカリスマ性は本物よ。自然と人は彼らに惹かれ、自然と人は彼らを慕う」
ロビンもロビンで、ナミの意見に賛同する始末だ。
『…そりゃあ麦わらくんはそーかもしれないけどさー』
私は不貞腐れたようにストローを咥えながら喋る。
そりゃあルフィと一緒に居るナミとロビンが言うならそういうことなのだろう。
そりゃあルフィもトラファルガーも特別な人間で、私とは住む世界が違うと割り切れる。
(…んでもよお…)
トラファルガーは違うだろ。どう考えても恐怖政治で人心掌握してますって面だろ。
なんて事が言えるはずがないので、私は口を噤んだ。なんの拍子で彼の耳に入るかわからない。壁に耳あり障子に目ありなのだ。
『ま、触らぬ神に祟りなしかな』
「「？」」
決めた。私はもう、何があってもトラファルガーとは関わらないぞ。
＊
「キャプテン？どうしたの？」
「……お前がどうした、ベポ」
なんか、なんか変なキャプテンに声をかける。もう昼休みもほとんど残っておらず、時刻は既に1:15だ。
いつものキャプテンなら、この場所に来たらさっさとご飯を食べてさっさと授業の支度をするべく教室に戻るのに、今日はそれをしない。
それどころか、さっきから手のひらを見つめては上の空って感じなのだ。
「キャプテン？具合悪い？」
「悪くねぇ」
そう言い、キャプテンは壁に寄りかかっていた背中を離す。
「おいベポ」
シャツの皺を伸ばしながらおれを呼ぶキャプテン。
「チョココロネって美味いのか？」
「ちょ、チョココロネ？キャプテン、パン嫌いじゃ」
キャプテンは生粋のご飯派だ。そんなキャプテンがパンをねだった。それも甘いヤツ。
もしや、これは本当に病気なのではないか？
「キャプテン…」
心配する俺の声を、キャプテンが遮る。
「確かに俺はパンが嫌いだ。だが、流石に嫌いと言うだけで逃げるわけにもいかないからな」
いいな？と念押しするようにキャプテンが言う。
「あ、アイアイキャプテン！」
ひとまずおれがそう言うと、キャプテンは納得したように去っていった。
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作者名：あまちー | 作成日時：2022年9月19日 23時
