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「アイツが幼稚園の頃よ、自転車に乗りてぇっつーから、休日はよく練習に付き合ってやったんだよ。
そん時もよ、『マルコ、絶対離すなよ』なんて必死に俺の名前呼んでなー」
「………………」
「小学校の頃もよい、ジェットコースターには乗れないから、お化け屋敷に一緒に入ったら怖くてギャン泣きしてよ。
『マルコ、絶対手離すなよ』なんて俺の手を両手で握ってなあ」
「……………」
段々と、ローの怒りやら嫉妬やらのボルテージが上がっていくのを肌で感じる。
こりゃ本気でホの字じゃねえか、なんて少し微笑ましくも思う。
「で、中学校の時もよい」
「おい待て！」
欠席者の名前を書き終わったローは、俺にそれをペンと一緒に渡してくると、本気で怒ったように俺を睨んでくる。
故意的とはいえ、段々とローの怒りのボルテージが上がっていったためか、記録簿の筆圧は段々と強くなっている。
「おいマルコ、てめぇはアイツのなんなんだ」
(ほほーう)
悔しそうに俺を見上げるロー。別に何に勝った訳でもないのだが、少し誇らしく思ってしまう。
「なんでもないよい。ただ、一緒に出かけたり学校行事に参加する位の関係だ」
「それがなんだって聞いてんだ！」
もしかして、俺事案だと思われてる？
揉め事は面倒なので、さっさと俺とAの関係を吐いた。
Aは俺の旧友のガキで、昔からの付き合いだと。
「流石にこの歳になってまで、やましい気持ちは無いだろうよい。
俺もそろそろ三十路超えて四十路よ」
弁解になるかわからないが、俺の一応の弁解をローは冷めた目で見てくる。未だに警戒心に満ち溢れた表情。もしこいつが野生の動物だったら、間違いなく噛みつかれてる。
「で、ローよ。お前はどうなんだよい。
A、お前のことは相当恐れてるぜ」
「はあ？恐れてるって、俺何かしたかよ…」
ローが俺に問い詰めようとしたその時、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴る。
タイミングが悪いな。そう思ったのは俺だけではなくローもなようで、バツが悪い表情をしては口を噤む。
「じゃあな、ロー。俺は一旦戻るけど、お前は後で俺に記録簿渡しに来いよい」
そう言い、薄い記録簿でローの頭を叩く。
「てめぇ…。ちゃんと書いただろーが」
「記入漏れだ。欠席はAだけじゃねぇぞ」
余程A以外に興味が無いのだろう。同じ委員会のチョッパーの名前すら書いていないそれを返し、俺も自分のテリトリーに帰った。
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作者名：あまちー | 作成日時：2022年9月19日 23時
