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「ローはなあ、あれだ。死の保健委員って言われてんだよい」
『知ってます』
「じゃああれだ。ローはな、最悪の世代って言われてんだよい」
『それも知ってます。存じ上げてます』
「…詳しいじゃん」
もっとマシな噂は無いのか？なんて思いながら、マルコの問いに頷く。
むしろ、トラファルガーのそんな噂を知らない奴なんて居ないだろうに。最悪の世代、死の保健委員、んな恐れ多い異名ばっかつけられてる本人は、その名に負けず劣らずの極悪顔だ。
目の下にはいつも濃いクマをつくり、柔らかい表情なんて作ったことは無い。笑うとしても、嫌味を含んだニヒルな笑いばかりだ。
でも、そんな彼を慕う人間が居るのも事実。シロクマやらペンギンやらシャチやら、そんな彼らはトラファルガーをキャプテンと慕う。
『あれって絶対恐怖政治ですよね』
「あれってなんだよい」
絶対彼らはトラファルガーに弱みを握られているんだ。そう決めつけては苦い顔をする私。
「そうそう。ローはよ、女の子にも人気があるんだぜ」
『大丈夫？それ。
女殴ったりしてません？』
そりゃあ目立つタイプの男だ。高身長イケメンとなりゃ、惚れる女はわんさか居るだろう。
生憎、私はそんなトラファルガーが女と二人で居る所なんて見たことないのだが。
「でもよ、アイツは良い奴なんだよい。
なんか…無駄に良い奴というか」
『…良い奴』
確かに、典型的な悪のカリスマって感じのやつだ。
多分、あの怖さのどこかに優しさがあるんだと思う。不良が雨の日の捨て犬に弱いように、きっと彼も情に流されやすい優しさがあるのだろう。
「そして頭が良くて将来は医者を目指しているようだ」
確かに才能に満ち溢れていそうな彼だ。成績が悪いなんて話は聞いたことないし、彼の人望を見る限り本当に秀でた頭脳があるのだろう。
…しかし妙だ。何故にマルコは、私に対してトラファルガーの話しかしないのだろうか。そもそも、なんでさっきから説明口調？
『少し肩入れしすぎじゃないです？』
「いや、ちょっと違うけど」
なかなか難しいなんて唸りながら、マルコは人差し指で眉間に触れる。
「A、あんたはとんでもねぇ鈍ちんだ」
そして、呆れたように大きく息を吐いた。
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作者名：あまちー | 作成日時：2022年9月19日 23時
