正体3 ページ26
そこらへんの石ではなく魔石だった。
緑と赤が混ざった魔石でキラキラ光って美しかったそうだが今手元にあるものはヒビが割れていて輝きを失っていた。
「昔綺麗で美しかった人が年を重ねるとこんな風になるとイメージしとけばいいよ。」
ラテが失礼なことを言ったがリリーはクスクスと笑う。
ラテはなぜか不思議そうにリリーを見た。
「リリーは気にしないの?」
リリーはその問いに首をかしげる。
「いや、いい。リリーはそんな子だもの。」
ラテが「リリーも年を重ねるとこんな風になるってことだよ」という嫌味とも取れる冗談を言ったのに何も言い返さないリリーを不思議に思っていたということは余談だ。
「石が割れてるってことは、お姉ちゃん死んだの?」
リリーは不安な目でヘンリー先生を見る。
「だから聞いたでしょう。さっき。」
ヘンリー先生はリリーを見つめ返した。
そんなこと言ってたようなー。
「ただ、亡くなったとはまだ判断できない。主様が一方的に切ったのかもしれないし、主様が主様じゃなくなったかもしれない。」
お姉ちゃんがお姉ちゃんじゃないくなった?
おじいちゃんが飲んでいたお茶をこぼしてあたりに茶器が割れる音が響いた。
「おっと、失礼なことを言ってすまない。」
ヘンリー先生はパッと呪文を唱えて茶器を元どおりに戻し、床に落ちた茶の残りを消す。
「私も想像ができない。主様が主様じゃなくなったことなんて。」
ヘンリー先生は、あくまで可能性だと言い張るがリリーはその可能性は低いと思っていた。
お姉ちゃんのような優秀な人を魔王がやすやすと殺すなんて考えられないからだ。
絶対利用しそう。利用できるものはたとえ敵でも、、、、、ね。
「お姉ちゃんが主従関係を消すのと亡くなった瞬間消えてしまうのと違いはあるの。」
「いや、全くだよ。」
ヘンリー先生は石をテーブルの上に置く。
「これは輝きを失ったがまだ価値はあわね。」
隣でつぶやいたラテの声はヘンリー以外誰も聞こえなかった。
ヘンリー先生は石を大切そうにしまい、さっきまでとは違う緊張感を漂わせた。
「それで、お願いがあるのです。」
家族達も茶や菓子を置いて姿勢を正す。拗ねてたリリーもだ。
「主様、、、ミアとの主従関係が切れた。あなた達は、これからどうなさるのですか。先に皆様の事を聞きたいです。」
リリーはきっぱりと言った。
「お姉ちゃんの意思を引き継ぎ、魔王と大臣に復讐する。お姉ちゃんが死んでなかったら魔王は無視だけど。」
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作者名:ザン | 作成日時:2019年8月7日 0時