秘密 ページ35
目が覚めると、珍しくヴィクターが隣で死んだようにみだれ髪で眠っていた。何故か上裸だ。
片腕が自分に引っかかっている。
起き上がって手を着くと、
〈カタ〉
(…?)
指先が固いものに当たった。
(なんだろうこれ…指輪の箱…?)
パカッと中を開けると、キラキラ光る苺型の宝石の指輪が入っていた。
(わぁ…綺麗…!ルビーかな…)
薄く入る陽光に透けて光る指輪をそっと外して指に嵌めてみる。サイズはピッタリだ。
微かにラズベリーコロンが香る。
(こんなものを送るのは…)
まず間違いなくヴァハムート卿だろう。
(プレゼント……?指輪を貰ったのなんて初めて…)
名残惜しく眺めていると、上裸のヴィクターが起きて腰に巻き付く。
「うぅ…ん…頭いた……ヴ…魔力使いすぎた…今日は…一日…動け……ない…」
ギクッとしたので少しホッとする。
「じゃあ今日は私がご飯作るね、ピッティパンナなんてどう?」
そっとヴィクターにキスをすると、Aは腕を振りほどいてキッチンへ走って行った。
数時間後…
「ふぁ…あれ…?ヴィクターは?」
調理中眠そうな声が聞こえるとダボダボパジャマの(女性にすら見える)フィオが立っていた。
「今日は一日動けないんだって」
「あらそ…ふぁ…ママ今日のご飯なに?」
ぎゅーーとフィオが後ろから抱きついてきた。
「ピッティパンナよ」
「スウェーデン料理?サイコー♥」
フィオは頬に挨拶のキスをして去っていった。
また数十分後…
「おい」
背後から無粋な声。
「…ヴィクターはどうした」
「一日動けないらしいわ」
「軟弱だな…」
「…私のせい」
「は?それ本気で言ってんのか…?」
「でも…」
「でもじゃねぇ。…許さねぇぞ」
ギラスはAの顎をクイっと上げて目を合わさせた。
「…わかった」
「分かればいい」
指を離したギラスは腰が痛そうな素振りをした。
「お風呂に入ってきたら?ヴィクターが色々呪文をかけて弄った癒しの浴槽があるよ。傷の治りが早いの」
「…そんなものあんのか」
ギラスは少し目の色を変えて歩き出した。
「何処だ」
「噴水の近く。水風呂の横」
「サンキュ」
Aはクスリと笑った。
その指に、キラリと指輪が光った。
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- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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作者名:フェンタニル | 作成日時:2020年11月29日 16時