ノ ゾ ミ - 希 望 編-【ツイステ / レオナ・キングスカラー】

◆43◆ ページ43

「…父上」


静寂の中 シオンの声が響き渡り、一瞬にして全ての視線が一点に集まる



「シオン…」


「父上、私からもお願いです
この婚約を破棄させていただけないでしょうか？」



その言葉に再び周囲がざわめき、タニヌは咳払いをすると息子に向けて冷たい視線を向けた



「シオン… 誰のためにここまでしているのかわかって言っているな？」


「…申し訳ありません」



消えるような声で謝ると、シオンは小さく震えながら深々と頭を下げた


＿＿まるで草食動物だな


どこの国でも第一王子というのはこんななのかと肩を落とすと、何やら腕の中でモゾモゾとAが動く



「…おい、何のつもりだ」


『ぇ… ぁ、っと…』



身を屈めて耳にそっと囁くと、Aはピクリと肩を震わせ、あからさまに目線を反らすように口どもる



＿＿全く、こいつは…



深く長いため息をついて視線を戻すと、案の定 おねだりをするような目でAはこちらを見てきた



『…ﾚｵﾅ』


「お前な…」



甘えるように俺の名前を呼ぶAに俺は眉を潜めるが、そんなのお構い無しに『お願い…』と両手を合わせてくるA




" 惚れたが負け "



昔、兄貴が笑いながら言っていた言葉がふと頭をよぎる


…本当に、
女ってのは強かな生き物だ


この時ばかりは兄貴に同情するように息をつくと、ゆっくりとAの肩に回した手を背中へと移動させる



「…帰ってくるんだろうな？」


『？
当たり前でしょ』




俺の心配なんて知らず、満面の笑みを向けてくるA

その笑顔に完全に敗北すると、俺はAの小さな背中を押した

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