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『A、頑張ろうナ!!』
ハチマキを額に巻き直して拳を握っては興奮している神楽ちゃん。私も髪を二つに結び、自分なりに意気込んだ。真上の太陽が私を容赦なく照らし、気が付いたらボヤッとしてしまいそうになる。
『A、顔赤いけど大丈夫アルか?』
『大丈夫だよ。日に当たって赤くなったのかな?』
「でも晴れて良かったね」と手を団扇にして仰ぐ私の誤魔化しに彼女は納得してくれたのか、特に疑心の顔を浮かべなかった。今日が曇りならば、もしかしたら疑われていたかもしれない。
荷物置き場に置いていた水筒の水を一気に飲んでいれば、近くのスピーカーから不協和音の後にアナウンスの声が聞こえる。
『只今より、三年生による全員リレーが行われます』
それを聞いた生徒は皆グラウンドのトラックの周りに集まり、私たちも人混みを掻き分けて何とか一番前の応援する場所を確保できた。お兄ちゃんの走る姿が見たいが、何番目に走るのかが分からない。
お兄ちゃんと私は同じA組のため、ハチマキの色が同じ赤色である。赤色のハチマキの三年生が目の前を走っていくのを見るが、お兄ちゃんの姿は一向に見えない。
もしかしたら反対側にいたのかもしれない、と不安になってくるも、バトンゾーンに立っているお兄ちゃんの姿を見つけた。競技は終わりを迎えており、なんと彼はアンカーだったのだ。
お兄ちゃんは肩からアンカーの証である襷をかけ、バトンを貰って走る。姿勢良く、風のように真っ直ぐ空を切って走るその姿はカッコよくて、目の前を通った彼に思わず大きな声をかけてしまった。
『お兄ちゃん! 頑張って!!』
はっと気づいた時にはもう遅く、もしかしたら怒られるかもしれない。
それに私からの応援なんて恥ずかしいだけかと肩を落とながら後悔するが、きっとお兄ちゃんの応援をしていた人なんてたくさんいる。その人達の声にかき消されてしまった可能性だってあるのだ。
一位でゴールを決めたお兄ちゃんの元には何人もの生徒が駆け寄っていき、その人たちを軽く遇らう彼の姿はどこか冷め切っていた。
しかしひとりのピョコンとしたサーモンピンクのアホ毛を跳ねさせている男の人が近づくと、お兄ちゃんの空気が少しだけ変わた気がしたのは、気のせいだろうか。
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ハル(プロフ) - マキさん» わ〜( ; ; ) ありがとうございます!! そう思っていただけたのなら嬉しいです!! これからもよろしくお願いします! (2018年2月18日 14時) (レス) id: 25f689583f (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - 面白いです(^^) (2018年2月18日 8時) (レス) id: 28245e4945 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ムーたんさん» ありがとうございます!続編、ぜひ見ていただけたら嬉しいです(^^)これからもよろしくお願いします (2016年6月8日 20時) (レス) id: 74bf78ff90 (このIDを非表示/違反報告)
ムーたん - 続篇、楽しみです!これからも頑張って下さい!! (2016年6月7日 17時) (レス) id: 5500c96e92 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ムーたんさん» ありがたいお言葉頂戴します(^^)これからもどうぞよろしくお願いたします! (2016年5月7日 20時) (レス) id: 74bf78ff90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2016年4月26日 21時