検索窓
今日:5 hit、昨日:20 hit、合計:672,617 hit

14 ページ15

.




『何してんの?』



恐怖という黒く厭な塊に支配されていたAの耳に届く、聞きなれた低い声。そのすぐあとに彼らの驚いた声も聞こえた。



『冷てっ!』
『おいやめろ!』



彼らの発した言葉にわけが分からなくなり、彼女は恐る恐る顔を上げて現状を見る。そこにはホースを持ってそこから出ている水を彼らに振りかける、兄である総悟の姿があった。


彼は逃げる者も逃がさずにびしょ濡れにさせていく。その表情は無であり、彼はロボットの機械仕事のように淡々と水をかけていた。



『てめェ! 何すんだよ!』



彼らの内の一人が総悟の胸ぐらに掴みかかるも、それをすぐさま跳ね除けては水を顔面にぶっかける。



『お前らこそ、何してんの?』



見下したように彼らを見ては簡単に鼻であしらう。その姿は氷のように冷たく、心なしかAは背筋が震えた。


今自分の目の前にいるのは、本当に兄である総悟なのか。それを考えてしまうも、自分を助けてくれたのは紛れもない、兄である総悟だ。



『……おい、もう行こうぜ』



水しぶきを飛ばしながら慌てた様に彼らは立ち去って行く。それらを横目で見送った総悟の冷たい視線は、次に呆然と立ちすくんでいるAの方を向いた。



『面倒かけさせんな』

『ご、ごめんなさい……』



気が付いたら彼女の目からは涙が零れ、ホースで濡れている地面に新たな歪な丸い染みを作る。これは安心からの涙か、それとも兄から受ける冷たさに泣いているのか……彼女自身にも分からない。



『泣いてんじゃねェ』



総悟の言葉にAは急いで涙を拭うも、こすりすぎて少々目が痛む。これ以上泣いてはまた兄に失望されてしまう。そう思ったAは唇を噛み締め、拳を握りしめた。


しかし「止まれ、止まれ」と胸の中で何度も唱えるのだが、意に反して涙は止まることを知らない。最後にもう一度鋭くAを睨め付けた総悟は踵を返し、彼女を置き去りにしてこの場を立ち去った。




.

15→←13



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (421 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
687人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 沖田総悟   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ハル(プロフ) - マキさん» わ〜( ; ; ) ありがとうございます!! そう思っていただけたのなら嬉しいです!! これからもよろしくお願いします! (2018年2月18日 14時) (レス) id: 25f689583f (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - 面白いです(^^) (2018年2月18日 8時) (レス) id: 28245e4945 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ムーたんさん» ありがとうございます!続編、ぜひ見ていただけたら嬉しいです(^^)これからもよろしくお願いします (2016年6月8日 20時) (レス) id: 74bf78ff90 (このIDを非表示/違反報告)
ムーたん - 続篇、楽しみです!これからも頑張って下さい!! (2016年6月7日 17時) (レス) id: 5500c96e92 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ムーたんさん» ありがたいお言葉頂戴します(^^)これからもどうぞよろしくお願いたします! (2016年5月7日 20時) (レス) id: 74bf78ff90 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory  
作成日時:2016年4月26日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。