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『ありがとう、そーちゃん』
理解できたことと、ずっと互いの間に溝ができていた兄である総悟が教えてくれたことによってAの高揚していた気持ちがボロを出す。しまった、と思っても遅いだろう。
『あっ、ごめんなさい……』
彼女が慌てて謝っても彼は何も言わずに押し黙った。俯いた視線は教科書をただ見つめており、総悟自身時が止まったような錯覚を感じている。
実は彼らの姉が亡くなってから、総悟はAに「そーちゃん」と呼ぶことを禁止した。だが、それまで呼んでいたクセで彼女は彼を「そーちゃん」と呼んでしまったのだ。
怒っているだろうかとAは伺うように総悟の顔を見るも、彼は苦しそうに唇を噛み締めては顔を歪めている。
そして何も言わず、総悟は荷物をまとめて図書室を出て行った。彼女はその後ろ姿を見つめるだけになってしまう。
また、嫌われた。
たった一人の家族にもうこれ以上嫌われたくない。
だがどうしていいか分からないと、Aは拳を握りしめて項垂れる。ナニカが床に零れ落ちそうになるのをぐっと堪え、ぽっかりと空いた席に残った自分の教科書を鞄に入れた。
一方総悟は、歩きながら先程のAの顔を思い浮かべる。彼は彼女の笑った顔を久しぶりに見たのだ。
いつもはぎこちない笑顔を自分に向けられているが、そんな顔をさせているのは総悟自身のわけであり、結局は自業自得なのだった。
彼は思わず見とれてしまい、「そーちゃん」と呼ばれたことに最初は気付かなかったのである。
Aが笑顔を崩してまで謝った理由がただの自分のちっぽけなワガママだったことに腹が立ち、彼は声にならない焦燥感にまた唇を固く噛み締めた。
そして、それ以上図書室にいたらまた彼女を傷付けてしまいそうで怖くなり、総悟は何も言わずに足早で図書室を出ることにしたのだ。
今でも目を閉じれば、くっきりとAの笑った顔が総悟の瞼の裏のスクリーンに映る。だがもう手を伸ばしても簡単に掴めず、望めぬモノになってしまっていた。
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ハル(プロフ) - マキさん» わ〜( ; ; ) ありがとうございます!! そう思っていただけたのなら嬉しいです!! これからもよろしくお願いします! (2018年2月18日 14時) (レス) id: 25f689583f (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - 面白いです(^^) (2018年2月18日 8時) (レス) id: 28245e4945 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ムーたんさん» ありがとうございます!続編、ぜひ見ていただけたら嬉しいです(^^)これからもよろしくお願いします (2016年6月8日 20時) (レス) id: 74bf78ff90 (このIDを非表示/違反報告)
ムーたん - 続篇、楽しみです!これからも頑張って下さい!! (2016年6月7日 17時) (レス) id: 5500c96e92 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ムーたんさん» ありがたいお言葉頂戴します(^^)これからもどうぞよろしくお願いたします! (2016年5月7日 20時) (レス) id: 74bf78ff90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2016年4月26日 21時