彼の倅が時間旅行をしてきたようですがどうすればいいですか？【リボーン/第四章】 (ページ30)

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176話ページ30

「綾」

「うひっ！？ ………あれっ、遥弥兄さん。どうしたの」

軽い足取りで、沢田家への道のりを歩いている綾を発見すると、遥弥はすかさず鋭い声音で声を掛けた。

怒った時の雲雀そっくりの声音に少し驚き、恐る恐る振り向いた綾だったが、

うしろにいたのが遥弥だと知り、少し相好を崩した。

「どうしたの、じゃないよ。はい、君。水菓子はこっち。それは空の箱だよ」

「えっ！？ ……うわ、ほんとだ。全然気づかなかった。

わざわざ届けに来てくれたの？」

「まだ遠くに行ってなさそうだったからね。それに手土産を持ってかせなかったなんて、俺の箔にも傷がつくでしょ」

綾が嫌そうに眉をしかめた。

「……うわあ、最後の発言だけ要らなかった……」

「ふぅん、じゃあこれもいらないかい？」

「いる、いるってば！！」

はい、と紙袋に入った水菓子の箱を渡すと、綾は「ありがとう」と素直に言う。

こういうところは、綾は雲雀より優れているが、それも多分幼少期にユキに出会った結果だろう。

でなければ、あんな荒んだ家で、こんな朗らかな娘ができるわけがない。

沢田家の人間には総じて人を癒す力があるようだ。ボスとしての血だろうか。

「あれ、遥弥兄さんついてくるの？」

「まあ、ここまで来ちゃったしね。暇だから」

「引きこもりの遥弥兄さんが……明日は雨が降るね」

「ケンカ売ってんの？」

軽く口げんかしながら歩いていくと、やがて沢田家に着いた。

ぴんぽん、とベルを押すと、すぐにユキが出てきて、玄関の戸が開いた。

「こんにちは。綾……あれ、遥弥さんも来たんですね」

「やっほーユキ。さっそく調べものしよう！」

「暇だったからね。久しぶり、ユキ。手土産もあるよ」

「ありがとうございます」

どうぞ、と案内されて、二人は沢田家の中に上がる。

変わらない様相に目を細め、遥弥が階上を見上げると、ユキが言った。

「……二階は今少し騒がしいですから、ダイニングでいいでしょうか？」

「そうなんだ。弟君に来客中？」

「ええ……まあ、そうですね」

「台所を貸してくれたら、俺がお茶を入れてあげる」

遥弥がそう言うと、ユキは「助かります」と少し疲れたような笑みを見せた。