彼の倅が時間旅行をしてきたようですがどうすればいいですか？【リボーン/第十八章】 (ページ26)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:8,362 hit

872話ページ26

「ルールを忘れていないだろうな了平」

「無論だ紅葉。一度でもヒザを着けば負け」

目の前で繰り広げられる乱戦。どちらも限界はとうに超えていて、それでもなお、負けられないからと諦めない。誇りとは恐らくそういうものなのだろうと思う。

二人を見ながら、遥弥は夜闇を溶かしたかのような漆黒の目を細めた。

……遥弥にはまだ、彼らのように絶対に譲れないものというものは、自分の中にはない。だから遥弥は自分のためには戦わない。

ただ、守りたいものくらいは、ある。

「遥弥さん？」

「何やってんだ、てめえ」

了平と紅葉の戦いの真っ最中、スラックスのポケットからスマホを取り出した遥弥を見て、10代目が訝しげに首をかしげ、獄寺が眉をひそめた。

しかし遥弥は取り合わず、そのままスマホを起動する＿＿＿＿電磁妨害(ジャミング)がなされているこの島で、唯一使い物になる自らの携帯端末を。

そしてその理由である、世界最強のホワイトハッキングプログラム、『電子の氷城(エレクトリカル・ダイヤモンド)』の主を呼び出す。

「師匠」

『や、遥弥くん。遅かったね。先に来てるよっ』

そして待っていたかのように、操作を待たずスマホのアプリが起動し……白金色の髪の美少女・フィオレンティーナの顔が映し出される。

遥弥は肩を竦めた。……もう、来ていたのか。

「そこにユキがいるんだね」

「えっ……！」

『いるよー！』

遥弥の言葉に大きく目を見開いた10代目と獄寺。

……そうだ、ティナは唯一、シモン側に存在が知られていない特殊な有幻覚体だ。監視されている中で、最も自由に行動出来る存在であり、そして何より強い。

現在並盛で最強(リボーンを除く)である遥弥が、師と仰ぐ“幼い少女”。

その彼女がユキのそばにいるということはつまり＿＿＿＿。

『ユキちゃんの事は任せてよ。何があっても私が守っておいてあげるからっ！』

「すぐに行く。……特にうちの父親をすぐに行かせる。……そう、ユキに伝えておいて下さい」

『わーかってるよっ！』

画面の中のティナが笑い、と同時にスマホの液晶が暗くなる。

遥弥は満足気に笑い……そして顔を上げ、目を丸くる。

「……なんだって」

彼の目に入ってきたのは。

お互いの誇りを貫き通した結果、同時に地に沈んだ晴と森の姿だった。