彼の倅が時間旅行をしてきたようですがどうすればいいですか？【リボーン/第十七章】

770話 ページ3

斬り飛ばされた手の飛んでいく方向は、あろうことかユニのいる方向だった。

……が、彼女は体の周りをうずまく炎によって、それによるダメージを受けることはなかった。


「本気なんだね……！ 本気でおしゃぶりに命をささげて死ぬ気なんだね、ユニ！！」

「まてユニ！ そこまでしてアルコバレーノを復活させる必要はない！」

「ユニさん！ 命を擲つなんて、そんなのいけません！！」


口々に叫ぶが、ユニの意志は固いらしい。頷く気配も見せず、静かにそこにたたずむままだ。

くわえて、それぞれの守護者が決壊に攻撃を加えるが……それも意味をなさない。

遥弥は目を眇め、それから傍らのリルに目配せした。リルも目線だけで頷く。


……ふと。気の迷いか、一瞬ユニの炎が弱まる。

だがしかし、状況は変わらない。アルコバレーノの姫の心は、強靭だ。

だからこそ。


「ユニを結界から連れ出すよ。準備はいいね、バジル」

「はい！ 今です！！」

「リル。ここにいる全員を巻き込むのはまずいから手加減もしつつ……吼えろ」

『承知致しました。若様』


すべての匣兵器の炎が雨イルカに。匣間コンビネーションでの攻撃が可能となったのだ。

バジルは行こう、と自身の匣兵器に声をかけると、一気に跳躍し、空に踊り出た。


「うおおおお！！」

『参ります』


スーパー・ノヴァ・オーシャン。一点集中の強烈な刺突が炸裂する。

一時的な小さな傷しか与えられないようだが……次いでそこに吹き込むのは、猛烈な吹雪。

バリバリバリバリ、と結界がもろく崩れていく。


「γ、今だよ」

「言われなくとも。命令するな、クソガキ」


遥弥の声とともに、飛び上がった人影がやぶれた結界の中に入り込む。

それを見てリルは吼えるのをやめ、口を閉じた。……見れば、足下の草がところどころ凍っている。

ここらが潮時だったのだ。ちょうどいいタイミングだったようだ。


「……これは、どういうことですか……遥弥さｎ」

「γが覚悟を決めたようだったからね」

「……まさか……！」

「俺達には止めることは不可能だよ。たとえ可能だったとしても……」


これは彼らが決めたことだ。冷たく思われはしても、この状況での口出しは無粋だろう。


「よお姫。やっと会えたのに、またすぐ行っちまうなんて水臭いぜ」

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