後ろの正面 rb ページ16
深く息を吸い、持ってきた石を鏡にぶつける。
「鬼さん鬼さんおいでください」
＿＿＿月が赤く染った
鏡にはあの時鏡に引き摺り込まれた、幼いままのロボロが居た。
爪は長く、血走った眼。鬼という言葉が相応しいだろう。
「ロボロ。迎えに来たよ」
会話は通じているのだろうか。
割れた鏡から1歩でて私の前に立ちつくしたまま動かない。
「A…？」
「うん。少し成長しちゃったけど。」
「ニげテ。」
「…嫌だ。もうロボロに、辛い思いをして欲しくないの。一人ぽっちは寂しいでしょ。」
「さみしクなイ。Aガイキてルなラそれでイイ」
「ダメだよ。ロボロが!!ロボロが生きてるはずだったんだよ。あの時私が鏡に入るはずだった。元に戻すだけだよ？大丈夫。私、もう泣き虫じゃないよ。」
「やめて、こんナオモイしてほしクない。」
「ロボロ。ロボロだけは、私の事覚えててね。私はロボロの事ちゃんと覚えてたんだよ？凄いよね。だから今度は、ロボロの番。」
私はロボロの隣をすり抜けて、鏡に近付く。
刹那、背中に強い衝撃を受けた。
鏡の中に吸い込まれる。力を振り絞って後ろを見れば、ロボロはニンマリとした顔で笑っていた。
あれ？ロボロと最初に交わした言葉はなんだっけ？
ロボロの家は何処だっけ？
ロボロの親はどんな人だっけ？
ロボロって
誰だっけ？
＿＿＿赤い月明かりに照らされた鬼は嗤う。
己の目的を達成したことに、勝手に笑みが零れるのだ。
「もう、遅いわ。こんなに察しの悪い子ぉだなんて気付かへんかったわ。まぁ、そこも可愛いんですけどね」
最初から友達としてのロボロ等存在していない。
毎日あの大きな鏡を通して見ていたのだ。彼女の事を。鏡の中から。
惚れられたが最後、彼女はこうなる運命だった。
これから彼女は延々の時を、2人で過ごす事になる。
彼女の回想は、改変された記憶。彼女の隣には元々、ロボロではなく、ロボロと成り代わっていた彼が居たのだ。ガキ大将から護ってくれたのも彼。あの時鏡に引き摺り込まれたのも彼だが、ロボロの掌の上。
お涙頂戴のシナリオを描いているだけだった。
「いやーまさかあのガキがAを連れて鏡を割ってくれるとは。夢にも思わんかった。しかも俺の事母親に話して…もうホンマに好き」
頬が染まり紅潮の息を漏らす鬼。
「やっと、俺の物や」
月は元の色に戻っていた。静まり返った廃校と、傷一つ無い大きな鏡が月明かりを反射していた。
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メメントモリ(プロフ) - 黎明さん» 黎明さん、コメントありがとうございます！そう仰って頂けて嬉しいです！今後ともよろしくお願いいたします。 (2021年8月18日 23時) (
レス) id: 8b496c2d67 (このIDを非表示/違反報告)
メメントモリ(プロフ) - ゆうなさん» ゆうなさんコメントありがとうございます。楽しんで頂けて嬉しいです！ありがとうございます。今後もよろしくお願い致します。 (2021年8月18日 23時) (レス) id: 8b496c2d67 (このIDを非表示/違反報告)
黎明(プロフ) - 素敵で、読み終えた後に何処か隙間風が吹き抜けた後の心地を感じました。どの作品も良かったです…！！！ (2021年8月18日 12時) (レス) id: e1d9bdb874 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - 主様の短編集は初めて見たのですがとても面白く、何度見ても飽きない程でした。本題に入りますが私の好きなお話はやはり朽ちた旧校舎ですかね、あの皆が居るところを想像しながら読むのはとてもわくわくし、その場にいるかのような気持ちになりました！ (2021年8月17日 1時) (レス) id: 53cc08d6c4 (このIDを非表示/違反報告)
メメントモリ(プロフ) - キキョウさん» コメントありがとうございます。旧校舎の続編はなかなか筆が進まない為、Twitterの方でゆっくり更新しようかと考えております。これからも我々怪奇譚よろしくお願い致します。 (2021年4月25日 1時) (レス) id: 8b496c2d67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：メメントモリ | 作成日時：2019年9月12日 20時
