第20話 ページ21
煉獄杏寿郎side
あの日、Aがなかなか帰って来ない事をおかしく思った俺は、急いで家を飛び出して、街までの道を走った。
前を見ると、真っ赤な番傘が分かれ道の林の前に投げ捨てられるような形で落ちていた。
雪の白の中に赤い色が混じっている様子は嫌な予感をさせた。
「これは、Aのか…?」
Aの愛用していた真っ赤な番傘の形とソックリで、悪寒が背筋を走る。
目の前の林を見ると、何処と無く嫌な雰囲気と鬼の気配、そして、濃い血の匂いがした。
俺は躊躇いもなく、林へ踏み込んだ。
刀に手を掛け、いつでも抜けるように腰を低くしながら、辺りを必死で見渡した。
ふと、目の前を見ると、見慣れた着物が落ちていた。
今朝も見た、大人しい色の着物だ。
柄も無地に近く、上品な香りを漂わせている。
「Aっ…‼‼」
そう、Aが今朝来ていたものだった。
駆け寄っていくと、そこにいたのは血塗れのAであった。
抱きしめると、氷のように冷たく、ピクリともしない。
嫌な予感は当たってしまったようだ。
しかし、想像もしていなかったことが起きていることに、抱き上げた瞬間気づいてしまった。
どうせなら、気づかない方が良かったであろう事実に。
Aから
…気配、なんてものは、移るものではない。
つまり、彼女から感じるのは、彼女の気配一択だということなのだ…。
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Aが鬼?
そんな馬鹿な。
自分の口から乾いた笑い声が漏れているのを感じる。
「杏、寿郎さん…?」
ポソリと聞こえたか細い声は、まるで生気を含んでいないようであった。
「A!」
ゆっくりと開けられた瞳を見て、文字通り血の気が引いた。
猫のように縦長の、鬼特有の瞳孔がこちらを見つめて来たからだ。
しかし、真っ黒で透き通ったその目は、どう考えてもAのもので…。
「A、君…」
俺が言葉を紡ぎ終わる前に、Aは右手を俺に伸ばして来た。
冷たい手が一瞬頰に触れ、俺は反射的に距離をとってしまう。
右手は重力に逆らうことなく、静かに雪の上に落ちて行き、Aの体は再び、雪に埋もれてしまった。
「杏寿郎さん…」
小さな声が聞こえる。
「私は…鬼ですよ…」
その言葉で、Aの伝えたいことが全て伝わってしまって、俺は固まるしかなかった。
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スノードロップ(プロフ) - ユリさん» 最後まで、お付き合い有難うございました!続きですね…!?頑張らせていただきます! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。出来れば続きがみたいです (2019年12月11日 1時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
スノードロップ(プロフ) - ツバサさん» とりあえず、話の流れと大まかな物語は書いているので、更新ペースを上げられれば、と思います!頑張らせていただきます! (2019年12月9日 7時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ - この後の展開が気になり過ぎて待ちきれません。更新頑張ってください (2019年12月9日 4時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
スノードロップ(プロフ) - サクラさん» 有難うございます(*^-゜)vThanks!更新ペースは、遅いですが、最後まで見てくれると嬉しいです! (2019年12月2日 7時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
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