第18話 ページ19
煉獄Aside
「旦那が鬼殺隊の炎柱か…なるほど、確かにそこらの女よりは動けていたな。だが、残念だ。お前はもう、人ではない」
鬼は、私の髪の毛を掴み、無理やり目線を合わせる。
そこらに舞っている血も、乱れた服も、皮膚にへばりついている乾いた血も、全てが私が鬼になったことを物語っていた。
杏寿郎さん、ごめんなさい。
私、あなたの敵になってしまいました。
ずっと一緒だと約束致しましたのに………
あなたは、子を楽しみにしていらしたのに……
「ごめんなさい…私は煉獄の名に恥じることを…」
体に張り付く血が気持ち悪い。
破けた服のところどころから、血に染まった皮膚が顔を覗かせている。
「ふっ。死んだ人間のような面だな。だが、安心しろ。お前は死なない、鬼だからな!」
高らかに笑う鬼の顔が憎ましく思える。
私の髪を掴んでいるこの手はきっと、数え切れないほどの人を葬ってきたものなのだろう。
そして今、私の人生を終わらせた。
もう、私は、生きるならば、鬼の生を生きるしかない。
そんなの、私の望んだものとは、かけ離れている。
「私は…!!人間として、儚く…!!短く…美しい人生を生きたかった……………」
鬼を睨み付ける。
老いて、弱り、簡単に死んでしまう、儚い人間。
でも、老いて死んでしまうからこそ、あの人を堪らなく愛おしく思えた。
尊いお方だと思えた。
杏寿郎さんは…雑魚なんかではなかった。
強さを…肉体のみならず…持っているお方であった。
私の尊敬し、愛するお方だ。
こんな奴に、とやかく言われる筋合いなんてない。
鬼として生きることを誇りとすら、思っているこいつは、地獄に堕ちるべきだ。
どうにか一撃与えられないかと、鬼へ手を伸ばす。
「無駄だといい加減理解したらどうだ」
私を投げ捨てるように、髪を離した。
雪に叩き付けられ、体が悲鳴をあげる。
続けざまに、お腹の中から蹴りあげる感覚がする。
いつもなら嬉しいこの瞬間も苦痛でしかない。
ああ、ごめんなさい。
母のせいで、貴方まで鬼になってしまったのですね。
守ってあげられなくてごめんなさい。
鬼は、私をしばらく見下ろした後、静かにその場から去って行った。
その場を支配するのは、私の荒々しい呼吸音だけとなった。
.
.
.
.
「戻り…たい」
262人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スノードロップ(プロフ) - ユリさん» 最後まで、お付き合い有難うございました!続きですね…!?頑張らせていただきます! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。出来れば続きがみたいです (2019年12月11日 1時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
スノードロップ(プロフ) - ツバサさん» とりあえず、話の流れと大まかな物語は書いているので、更新ペースを上げられれば、と思います!頑張らせていただきます! (2019年12月9日 7時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ - この後の展開が気になり過ぎて待ちきれません。更新頑張ってください (2019年12月9日 4時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
スノードロップ(プロフ) - サクラさん» 有難うございます(*^-゜)vThanks!更新ペースは、遅いですが、最後まで見てくれると嬉しいです! (2019年12月2日 7時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ