第13話 ページ14
Noside
「杏寿郎さん、傷は殆ど治りましたが、具合はどうでしょうか?」
「傷があることを忘れてしまうほど、傷みも薄い!」
そう言って、杏寿郎は自身の右腕をさする。
そうですか、と微笑むのは、杏寿郎の妻である煉獄Aである。
柔らかい髪を流して、首を傾げる姿は大変美しい。
そんな彼女は、現在妊娠8カ月目。
腹も大きくなり、歩くのにも苦労するようになった。
そんな彼女を1人にはできず、仕事を休んでまで彼女に付きたいと杏寿郎も常々思っているのだが、柱という位である以上、仕事は簡単には休めないものだ。
世の中、なかなか上手くいかない。
「お茶を持ってきますね。昨日、蜜璃さんから戴いたお茶菓子がありますので」
Aはゆるやかに微笑むと、腰を上げ、ゆっくり歩いて行く。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。
というが、自分の妻はそれ以上だな、と思う杏寿郎は末期かもしれない。
「あら?千寿郎君、お茶っ葉ってもう無くなったんですか?」
いつもの棚を見るが、買いだめて置いたお茶っ葉がない。
仕方なく、隣の部屋の掃除をしていた千寿郎に問いかける。
すると千寿郎は、少し考えた後、ハッとしたように顔をあげた。
「すみません!先ほど、僕が飲んだものが最後だったんだと思います。買ってきましょうか?」
「あ、いや、大丈夫です。私が行きますから」
「そんな…っ。妊婦さんなんですから、どうか安静になさってください」
しかし、Aが首を縦に振る様子は無い。
微笑んで、自分が行くと言うのである。
「でも……」
「ずっと家では、体も鈍ってしまいます。妊婦だからといって引きこもるよりは、少しくらい運動した方が良いんですよ」
その言葉に千寿郎は言い返す事ができなかった。
渋々といったように千寿郎は、買い物に行ってもらうことにした。
「ということで買い物に行って参ります」
「俺も着いていこう!」
「家にいてください。足の方は軽傷だったとはいえ、動いて、傷口が開いては大変です」
優しく嗜めるようなその口調に杏寿郎は、ぐうの音も出ない。
「むぅ」
その様子に千寿郎は、苦笑いを溢す。
妊婦と怪我人、千寿郎としては、どちらも休んで欲しいものだ。
しかも、今日は雪が振り続き、足場も悪い。
赤い番傘を差して、白い息を吐き出すAは、酷く儚く、まるで咲いてしまったら最後、すぐ散ってしまう花のようであった。
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スノードロップ(プロフ) - ユリさん» 最後まで、お付き合い有難うございました!続きですね…!?頑張らせていただきます! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。出来れば続きがみたいです (2019年12月11日 1時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
スノードロップ(プロフ) - ツバサさん» とりあえず、話の流れと大まかな物語は書いているので、更新ペースを上げられれば、と思います!頑張らせていただきます! (2019年12月9日 7時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ - この後の展開が気になり過ぎて待ちきれません。更新頑張ってください (2019年12月9日 4時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
スノードロップ(プロフ) - サクラさん» 有難うございます(*^-゜)vThanks!更新ペースは、遅いですが、最後まで見てくれると嬉しいです! (2019年12月2日 7時) (レス) id: 4bbeb34f3b (このIDを非表示/違反報告)
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