標的197 「当の本人はまだ思い出さずに行く」 ページ5
『なんでこうなった』
「あぁ？」
『なんもないっす』
森からどうにかこうにか脱出(ボスの後についてっただけ)した俺は、部屋に戻ったはずなんですけど……なんか知らんがボスがついてきた。
わけがわかりません。俺は寝ようと思ったんですけど……会話が成立しちゃったからお化けとか幽霊じゃなさそう。
『ええっと……なにか話でも』
「……特にねぇ」
『えぇ……』
俺の部屋のソファにふんぞり返るザンザス。何も出さないわけにもいかないでしょうってことで、コーヒーを淹れた。夜中だけど、寝たいけど。淹れたんです。
『とりあえず、どうぞ』
「……」
睨まれたのではないかというほどの眼光で一瞬こちらを見て、コーヒーに視線を落とした。手をつけないので、凄く不安である。
『えっと……紅茶がよかったですか？』
「酒」
『俺未成年なんで、ちょっと置いてないですね』
「……」
今度こそ睨まれたが、少し間をおいてコーヒーカップを手にしたボス。
キレられずに済んだことにホッとため息をついて、机を挟んでボスの正面にあるソファに腰を下ろした。勿論、かなり姿勢を正して。
静かにコーヒーカップを傾けるボス。スクアーロも顔が整っていて美人だとは思うが、ザンザスも恐ろしく美形だ。ベルもイケメンだし……え、何この集団イケメン率が高くないですか？
で、気になるのはやはり……そんな美形の顔に残る痛々しい傷。
「醜いか？」
『ッ！……何がですか？』
「気づかねえとでもおもったか、ドカス」
顔の傷を見ていることはバレていたらしい。
それどころかとんでもない勘違いまでされている始末だから救えない。
いや、この場合は勘違いじゃないかもしれない。確かに、僅かではあれど、ザンザスの顔にその傷は不要なものと考えてしまったから。
『痛いですか？』
「あァ？」
『あ、そうだ。ちょっと失礼しますね』
わんちゃん消えるんじゃねえかと思いついて立ち上がり、ザンザスの顔の傷に右手で触れ、白い炎を出す。さっき見られてるから、今更変わんないし。
暫くそうしていたがやはり消える気配はない。
『やっぱり古傷は無理か……』
「おいドカス」
地を這うような声と共に右手をガシィッと掴まれた。
あ、まずい。
『あ、いや、これは、その……治るかなって、思いまして』
「………」
『悪気はないんです！ちょっと、痛かったらアレだし、というかまず消せるもんなら消したくて！！ボスはイケメンだから！その、あの、だから、えっと、ええっと』
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りお(プロフ) - こんばんは、いきなりのごめんと失礼致します！とっても面白かったです、作者様のこの作品を見つけて一気読みしてしまいました！こんな素敵な作品ありがとうございます。次の更新も楽しみにしております！ (2021年6月30日 23時) (
レス) id: 02a06a9e06 (このIDを非表示/違反報告)
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