第一章 月は満ち欠けを繰り返し、光の色へと染まりゆく

標的17　「初めて教室に行く」 ページ19

チャイムが鳴り、行こうかという先生の声でソファから立ち上がる。
正直、職員室は苦手なのでさっさと出たかった。
因みに、制服の件は先生に伝えておいた。後で風紀委員に事の次第を伝えろとは言われたけども。
すたすたと歩いていると俺のクラスとなる教室が見えてきた。

「まず私が入るから、桜龍は私が呼んだら入って来てくれ」
『はい』

2‐Aの教室の前でそう言われたので、大人しく返事。
まぁいかにも転入生って感じだな。



「おはようみんな」
「「「おはようございまーす」」」

チャイムが鳴ってしばらく経つと担任が入ってきた。
朝の挨拶に何時もならやっつけで返すクラスメートが今日はウキウキと言った効果音でもついてるように元気に返す。
分かり易いな皆…と呆れる俺も楽しみなのでひとの事は言えないけど。

「さて、みんな知ってると思うが……転入生が来るぞ！」
「「「うやっほーーー！！」」」
「男！？女！？」
「イケメンがいい！！」
「ばっかお前、女子がいいに決まってるだろ！！」

ギャーギャーと煩さが増した教室。
皆どんだけ必死なんだよと苦笑いしていると、隣からつつかれた。
ツナが顔を向けると京子ちゃんの笑顔。

「ねえツナ君。ツナ君は男子と女子どっちがいい？」
「え？俺はどっちでもいいかな」
「私も。やっぱり面白い子がいいね」

そうこう言っていると担任が入っていいぞ、とドアの向こうに声をかけた。
どっちでもいいと言ってはみたものの、やはり緊張する。
ごくりと唾を飲み、ツナはドアを凝視した。



「入っていいぞ」

担任の声がしたのでドアに手を掛ける。
開けなくともわかる、こちらへの視線………出て行きにくいな。
でも行かなければ始まらないのでガラガラとドアを開けて教室に入った。

「うわ……」

誰かの声が聞こえたが気にしない。
担任の隣まで歩いて行ってバッグをいったん地面に置いた。

『桜龍Aだ。中学一年までしか日本に居なかったから二年から転入になったんだが……皆より少しだけ年上だけど同級生として扱ってくれ』

よろしく頼む。と頭を下げる。
暫くして頭を上げてみたが、シーンとなっている教室。
なんか俺ミスりましたか？無意識にイタリア語とか喋りましたか？

『えっと…』
「「「イ、イケメンだあああああああああああああ！！」」」
「「「美人な女子だああああああああああああああ！！」」」

女子はイケメンと叫び、男子は女子と叫んだ。
………俺の性別が定まってないんですがそれは？

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