第弐幕、戦国時代に飛んだ元一般ピーポーは最強のさすらい人らしいです。 (ページ9)

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第五十二戦目　貴「俺に足りなかったもの。狂わなかった理由」ページ9

貴「アアアアァァアアァァァァァアアァァッッッ！！！！！」

小「大丈夫か！？」

貴「ハァ・・・ハァ・・・小十郎・・・さん？」

飛び起きると横には小十郎さんがいた。
心配そうにこっちを見ている。

小「たまたま部屋の前を通りかかったら魘されてたからな・・・少々手荒だが揺り起こさせてもらった」

銀「ｷｭｲ!」

銀も起きていて小十郎さんの横で心配そうにこっちを見ている。
あぁ、起こしたかわりぃなとどこか冷静な自分が言ってるが、当人の方の俺はそれどころじゃない。

貴「夢・・・か？」

小「どうした？」

貴「分からない・・・分からないけど・・・・あれは・・・アレの目は・・」

アレとしか言いようがない。
男だったか女だったか、確かにあの暗い世界では見た筈のそれの外見も何もかも忘れた。
だが、あのおぞましいほどの負の感情と振り返った時の目は覚えてる。

貴「俺なんだよ・・・・・間違いなく・・・あの化け物は・・・俺の中にも確かに・・・」

あの時・・・俺の中のすべてが壊れたあの時に巣食ってしまった化け物。
暗い所にいたアレには間違いなくその化け物がいた。それも表に出ている状態で。
俺も一歩間違えばアレの状態になっていたはずだ。アレにあるのは憎悪、後悔、自責、懺悔、そして・・・恐ろしいぐらいにまっすぐで狂おしいほどの愛。

貴「俺にはあの時・・・一つ足りなかった。だから狂わずに・・・でもあれには・・・」

条件が全て揃っていた。
アレがなんなのか全くわからないのに言い切ることができた。

貴「俺は愛が足りなかった・・・だから空虚が残って・・・でもアレは・・・あれは」

あ・・・ぁ・・・あぁぁぁぁ

小「もう黙れ！！」

いきなり小十郎さんが怒鳴った。
肩を掴まれ小十郎さんの方を向かされる。

小「お前は何を見ている！！何に恐れてる！！」

貴「アレだ・・・アレが俺の中にも」

小「お前はお前だ！！しっかりしろ！！」

貴「お前になにがっ「わかりゃしねぇ！！！」・・・・え」

小「何も分からねェ。が・・・お前は化け物じゃねェのは分かる」

貴「でも・・・俺には」

小「今のお前はなんだ？化け物か？」

貴「俺は・・・」

小「化け物におびえるお前は化け物じゃねェ」

そのままゆっくりと抱きしめられた。
トントンとゆっくり背中を叩かれると自然とぐちゃぐちゃだった頭の中がまとまってくる。

小「お前は・・・今は人間だ」

俺は小十郎さんにしがみついて泣いた。
アレを振り払うために、必死で。