八百七十九話目 「邂逅」 ページ34
短刀を右手に奴のような誰かは語る。昔話のような理想を。
そしてこれは奴が望んでいた未来。
意図せず今日のぞき込んでしまった、奴の闇の部分。柔くて、脆くて、きっとあいつが俺には見せたくなかったであろう過去。
『お母さんは高校からは給食がないからってお弁当を持たせてくれた、弟はサッカーチームのキャプテンになってたし、お父さんは彼氏が出来たらチェックするぞって煩かった……でも連れてきたら連れてきたで「お前が選んだ男なら」って別に何も言わないの。おっかしいでしょ……で、私は近所の高校。頭いいところに無理して行かずに、貴方が大切だと思うものがある場所で頑張りなさいって……私、友達と一緒に高校三年間過ごしたかったから地元の高校にした。将来なりたい職業はいっぱいあって決められない…………幸せそうでしょ』
にっこりと笑う奴。
その笑顔のまま口を開いた。
『こうなる筈だったの』
笑顔は張り付いたまま。
『こうなる筈で、これでよかった』
笑顔だ。
『普通でよかった』
笑顔。
『普通がよかった』
違う。奴は。
『私は、お前に会いたかった。本物じゃなくてもいいから、会いたかった』
笑顔のまま。
いや、笑顔で。
『私を殺したお前に、仕返ししてやりたかった』
「え…………」
『会いたかったよ。黒瀬先生』
男の胸を、もう一度深く刺し貫いた。
笑顔のまま、怒りながら、哀しみながら、剣先を突き立てる。
断末魔の叫びをあげた男は数回痙攣した後全く動かなくなった。笑ったままそれを見届けた奴だったが、一分ほどして表情を戻すとゆっくりと俺の方を見る。
『………金具、なくなってるよ』
言われて気づいたが四肢の拘束が解かれていた。恐らく能力者である男が息絶えたからであろう。そのうちこの空間からも出られるはずだ。
椅子から立ち上がると舞台から飛び降りた奴。見た目はそっくりそのまま奴だが細かいところの動きや仕草が少し違う。
まず、奴だったら間違いなく飛び降りる時に手を着かない。一回しゃがんでから降りるなんてことはしない。
『そんな目で見ないでよ。私だって好き好んで出てきたわけじゃないし』
「……どういう目だ」
『早く失せろって目。「俺」と「私」じゃ人格から違うんだから仕方ないでしょ？「俺」のほうは内側でめそめそしてるからどうにかしといてよ』
「なぜ俺が」
『じゃ、あのピンク鳥に押し付けといてよ。それで元通りでしょ』
「…………」
『ふはっ、なんでそんな分かりやすいの』
八百八十話目 「奴であって奴でない」→←八百七十八話目 「目を覚ます」
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涙腺崩壊日本人 - 2章まってます！！！！！ (2022年9月9日 21時) (
レス) @page50 id: 66bf482254 (このIDを非表示/違反報告)
涙腺崩壊日本人 - ルッチさんの為なら、いや、更新のためなら天に召されても良い、、、、 (2022年8月18日 0時) (レス) id: 66bf482254 (このIDを非表示/違反報告)
涙腺崩壊日本人 - ルッチさん好き過ぎる作戦隊長さん、ありがとう感謝します私は貴方のおかげでルッチさんに目覚めることが出来ました！ワンピが帰ってくるのを待つぜ！更新お願いします！！超超超超超超超超超大好きです！ (2022年8月18日 0時) (レス) id: 66bf482254 (このIDを非表示/違反報告)
ルッチさぁぁぁん - ホントわかる、、ルッチさん好き (2022年5月11日 23時) (レス) @page44 id: 66bf482254 (このIDを非表示/違反報告)
狐竜(プロフ) - ぴゃ！！！？？（大混乱）やった久々の更新！！！ほんともうこのシリーズのルッチさん大好きなんですよ私……嬉しい…！！！ (2022年3月28日 21時) (レス) @page46 id: 2674e8aa46 (このIDを非表示/違反報告)
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