55話、気が変わった ページ7
煉獄 〜視点〜
「…逃げられてしまったな」
「ふふっ、余り苛めすぎるからですよ」
「反応が初々しいからつい、楽しくなるんだ」
グラスを揺らし、氷を回した
ほんの出来心で遊んでみたら案の定の反応で──
男慣れしていないのは十中八九、分かってはいたが…よもや、此処まで心踊らされるとは思わなかった
" 煉獄さんの初めて…私も貰えましたね? "
まさか彼女の口からそんな事が聞けるとは予想していなかっただけに、不覚にも反応が遅れてしまった
仕返しとばかりに少し虐めてやれば、期待通りの反応──
思い通りに行きそうで中々いかない
それが何とも楽しいことか──
彼女を思い自然と口元が緩む
「──それにしても煉獄さんが写真を撮るとは…私の記憶だとお嫌いだったと思うのですが?」
「……あんな顔をされたら断るワケにはいかないだろう?」
「相当お気に入りなのですね」
「あぁ、まぁな…」
写真は昔から嫌いだった
証拠が残るっという事もあるが、何よりも撮られた写真を他人に見せびらかし自分の男だと言いふらしたバカ女が例に漏れず居た事があった
些細な事ではあったが、面倒な火の粉は払うに越したことはない
氷が溶けて薄くなりつつあるウイスキーを飲み干した
「…マスター」
「! こんなことしなくても煉獄さんなら落とせる気がしますけどね?」
「保険を掛けるに越したことはないだろう?」
「…こんなこと言うのもアレですけど彼女、純粋で良い子なのに…っと少し残念に思いますよ」
「……味見だけのつもりだったが、気が変わった」
マスターの元に二枚の折られた札をテーブルの上にソッと置いた
男が女にやる常套手段──。
確かにこんなことしなくても上手いことやれば流せる自信だってある
だが、彼女は──Aは他の女とは、ひと味もふた味も違う
そこに惹かれている所も確かにあるが……
残念だと口にしつつも仕事の一環である以上、暗黙の了解で受け取るマスターの手腕は気に入っている
56話、カクテル言葉→←54話、雰囲気に持っていかれたぁあッ!
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作者名:棗 | 作成日時:2021年11月5日 0時