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部屋にはぽつんとAだけが残る。
ずっと握りしめていた手のひらには、爪の痕が赤く残っていた。
(…
部屋にはAと義母の二人だけだったが、部屋の外には誰かがいた。
おそらく先程の話も聞かれていただろう。
いつもなら魔と氣で誰なのかは分かったかもしれないが、今のAにはその余裕などなかった。
「ランギルス、盗み聞きはいただけないな」
「団長もでしょう」
部屋の外で彼女達の話を聞いていたのは、Aの同期であるランギルスと幼馴染のウィリアムだった。
相変わらず彼女は、自分の婚約云々よりもウィリアムのことを考えていた。
「…
「そうですか」
「…がっかりしたかい？」
「……いいえ。むしろ納得しました」
Aは超がつくほどお人好しなので、きっとランギルスの複雑な家庭にも何かしらの干渉はするのかと思っていた。
しかしランギルスの予想とは反して、彼女は必要以上にランギルスとフィンラルの間に深入りはしなかった。
もちろん察してくれたのだろうし、それもある意味一種の優しさだと言える。
だが一番の理由は、A自身の家が複雑だからだった。
彼女は自分のことをほとんど話さないし、興味も無い。
逆に他人のことや魔法には興味がある。
王族貴族平民下民の中で最も複雑である貴族の家にいるせいか、身分に対しては良くも悪くも平等で、どうでもいいとすら思っている。
彼女はとてもアンバランスだ。
ウィリアムについてもそうだ。
“酷いこと”が何なのかは分からない。
ウィリアムの仮面の奥を知らないランギルスには、彼が何をされたのかは想像しがたいのだ。
しかし、ウィリアムが“酷いこと”をされた故にAは彼の後ろをついて行くようになったのかと納得がいった。
がっかりなどしていない。むしろ惚れ直した。
惚れ直したから尚更この婚約には断固として反対だ。
「団長はいいんですか。Aを嫁に行かせて」
「まさか。Aを大切にしてくれない人なら国王を殴ってでもやめさせるよ」
「僕なら寝取ります」
「それも良いね」
よりによって過激派の二人が盗み聞きしたのは良くなかった。
ウィリアムは仮面越しでもわかるくらいの黒い笑みで、ランギルスは…ランギルスはいつも通りだ。
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なな - こちらこそ、ありがとうございます。 (2019年12月1日 20時) (
レス) id: 1a6326dc3e (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - ななさん» 刺激的なお話ですね！書いてみます。ななさんリクエストありがとうございました。 (2019年12月1日 15時) (レス) id: 88d49bbab8 (このIDを非表示/違反報告)
なな - リクエストです。夢主の義理の母が、来て夢主の結婚の話をしているところを、誰かが盗み聞きという話って書けますかね。 (2019年12月1日 13時) (レス) id: 1a6326dc3e (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - 柚さん» 刀と驚きでほぼほぼ確定ですね！そうです鶴じいさんです。柚さんコメントありがとうございました！ (2019年11月16日 23時) (レス) id: 88d49bbab8 (このIDを非表示/違反報告)
柚 - 人生には驚きが必要だ…!まっまさか!鶴さん!?鶴丸国永こと鶴じいなんですか!? (2019年11月16日 23時) (レス) id: 441c37839d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：HANON | 作成日時：2019年9月28日 0時
