さんじゅうはち。 ページ38
走って走って走って、周りを見渡す。
……居た、特徴的な栗色の頭に細身の体。
篠さんだ！
『あの、待って！』
「Aさん、どうかしました？」
『落とし物、です…！』
「ああ、煙草、ありがとうございます。」
それじゃ、と言って再び駅の方へ向かおうとするので思わず上着の裾を掴んで引き止めてしまった。
「…Aさん？」
『あ！えっと、その…。』
反射的に手を離してしまった。
このままでは用事もないのに引き止めたと思われてしまう。
実際そうなのだけれど。
ない頭を回転させて話題を探す。
出てこない、何も。
どうしよう、どうしよう。
「Aさん、」
大丈夫ですか？と、彼がそう言い切る前に口を開く。
『わたし！！……あなたのことが、好き、みたいで…。』
…言ってしまった、今言うつもりなんて無かったのに。
でもいいのだ、どうせいつかは、振ってもらわなければならないのだから。
しかし、その後の言葉が出ない。
振ってくださいと、一言告げるだけなのに。
視線が合わせられない、俯いて、自分の手をきゅ、と握り締めた。
少しの沈黙の後、ふ、と彼の小さな笑い声が聞こえ
「知ってました。」
そう、告げられる。
驚きのあまり、きっと真っ赤であろう見られたくなかった顔も気にせず勢いよく顔を上げてしまった。
「知ってたってのは語弊がありますね、確信は無かったんです。俺から好意を伝えましたけど自信はなくて、Aさんから言って貰えるの待ってるとかいう女々しい事してました。……顔、真っ赤っすね。」
かわい。そう言ってわたしの赤くて熱いであろう頬に手を滑らせる。
「あ〜…。改めてもう一度俺から、言わせてください。」
わたしと比べれば大きな手が離れ、少し緊張した様子。
「俺も、Aさんの事が好きなんです。お付き合い、してくれますよね？」
『でも、篠さんは社会人で、わたしは学生で、立派な篠さんに、わたしが、釣り合うわけなくて……。』
「そんなこと気にしなくていい、っすよね？」
『え』
「男だからとか女だからとか俺もアンタに言ったしアンタも俺に言った。それと同じで学生だからとか社会人だからとかそんなもん些細っすわ、アンタに好きだって言われたら、俺がアンタを逃がす理由がない。」
ね。だから、ええやろ？
そう言って手を取られれば、目の前の彼からするバニラの香りを忘れる理由などなくなった。
今持ってる可愛い洋服達は、これからも活躍してくれるみたいだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 274人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「wrwrd」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
NPC(プロフ) - 木ノ葉紫苑さん» はじめまして、コメントありがとうございます。番外編を書くつもりではいますがまだなにも準備をしていないのでしばしお待ち頂ければと思います。 (2019年11月22日 14時) (
レス) id: b53827df86 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ葉紫苑(プロフ) - コメント失礼します。shpくんはカッコイイし夢主は可愛いしで胸をキュンキュンさせながら何回も読んでいました。完結してしまったのが悲しいくらいです。もしよろしければ番外編など書いてもらえないでしょうか・・・？もっと二人の話を見てみたいです！ (2019年11月22日 9時) (レス) id: 1356d40d0e (このIDを非表示/違反報告)
NPC(プロフ) - ルリさん» はじめまして、コメントありがとうございます。格好良いshpさんが書けているようで安心しました！鈍足更新になりますがよろしくお願いします。 (2019年7月24日 6時) (レス) id: ef536ebeda (このIDを非表示/違反報告)
NPC(プロフ) - 咲羽さん» はじめまして、コメントありがとうございます。一個人の想像でときめいて下さってるなら嬉しいです！鈍足更新になりますがよろしくお願いします。 (2019年7月24日 5時) (レス) id: ef536ebeda (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - コメント失礼致します。控えめに言いますね。shqくーん！！！！イケメンだよぉぉぉお！さりげなく誘うとかかっこよすぎだろぉおい！やばいって！ｺﾞﾎﾝえっと、とっても好きです。これからも頑張ってください！ファンでs((殴 (2019年7月23日 22時) (レス) id: 8cc938a036 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
