さんじゅうさん。 ページ33
視線を落としていたらいつの間にか公演は終わっていて、会場は明るくなっていた。
3分の2くらいしか見れなかったなあ…。
「出ましょうか。」
『はい。』
一方的に絡められていた指がするりと離れてしまう。
やっぱり少し寂しくて、前を歩く彼の方へ手を伸ばしてみるけど勇気が出し切れず引っ込めてしまった。
「このあと、どうします？」
『へっ。』
今日も、ご飯行きますか？って聞いてくれると思ったのに。
あ、この考え方嫌だな。
「いや、この間みたいに飯……って思ったんすけど、後半あんまり楽しそうじゃなかったんで。体調でも悪いんかなって。」
『それは、違うんです、その……。』
緊張してて、とか、手を繋げなくて、とか、そんな事言えるわけなくて、言う勇気なんてなくて、喉でつっかえる。
『………なんでもないです！ご飯行きましょ！』
コツコツと低めのヒールを鳴らして篠さんを追い抜いた。
それから何を食べたいか、なんて話をしながら歩いてたら見つけた適当な居酒屋に入る事にした。
通されたのは2人で横並びに座る、所謂カップル席。
篠さんとそういう関係に見られてるのかと思うと嬉しい反面、申し訳なくもなる。
わたしなんかと、大して可愛くもない。
「何食います？」
『んん…サラダと、唐揚げ食べたいです。』
「いっすね。」
すんません、と彼が手を上げて店員さんを呼んだ。
サラダと、唐揚げと、あと2品くらい。
それと飲み物、わたしはレモンサワーで彼はビール。
そっか、今日車じゃないから。
篠さんお店でもお酒買わないよなあ、最初にご飯行った時は煙草ばっかり吸ってたし。
今日もそうなのかなって思ったけど煙草を出す素振りも見せない。
『あの、』
「…はい？」
『煙草、良いんですか？』
珍しく目を見開いてぱちくりと瞬きをする。
「……嗚呼、折角可愛い格好してくれとるAさんに煙草の匂いつけたら悪いかな思って。」
そんな事気にしてくれていたのか。
別にいいのに。
というか、むしろつけて欲しいと思うわたしが居る。
『……気にしなくていいですよ。』
つけてくれなんて言う勇気はないけれど、これくらいなら許して欲しい。
じゃあ、遠慮なく。と言えばポケットから煙草を取り出して直ぐに火をつけた。
目の前を流れていく煙を見れば欲が満たされていくのを感じる。
届いたアルコールで乾杯をして、残りの欲はそれでわたしの中へ押し戻す事にした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 274人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「wrwrd」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
NPC(プロフ) - 木ノ葉紫苑さん» はじめまして、コメントありがとうございます。番外編を書くつもりではいますがまだなにも準備をしていないのでしばしお待ち頂ければと思います。 (2019年11月22日 14時) (
レス) id: b53827df86 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ葉紫苑(プロフ) - コメント失礼します。shpくんはカッコイイし夢主は可愛いしで胸をキュンキュンさせながら何回も読んでいました。完結してしまったのが悲しいくらいです。もしよろしければ番外編など書いてもらえないでしょうか・・・？もっと二人の話を見てみたいです！ (2019年11月22日 9時) (レス) id: 1356d40d0e (このIDを非表示/違反報告)
NPC(プロフ) - ルリさん» はじめまして、コメントありがとうございます。格好良いshpさんが書けているようで安心しました！鈍足更新になりますがよろしくお願いします。 (2019年7月24日 6時) (レス) id: ef536ebeda (このIDを非表示/違反報告)
NPC(プロフ) - 咲羽さん» はじめまして、コメントありがとうございます。一個人の想像でときめいて下さってるなら嬉しいです！鈍足更新になりますがよろしくお願いします。 (2019年7月24日 5時) (レス) id: ef536ebeda (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - コメント失礼致します。控えめに言いますね。shqくーん！！！！イケメンだよぉぉぉお！さりげなく誘うとかかっこよすぎだろぉおい！やばいって！ｺﾞﾎﾝえっと、とっても好きです。これからも頑張ってください！ファンでs((殴 (2019年7月23日 22時) (レス) id: 8cc938a036 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
