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その日の放課後、部室へ行くと

気を効かせてか、みかの姿はなかった。





『みかはどうしたの?』

「日直で遅くなるそうだ」

『…そっか』





二人きりなんて久しぶりで、

会話なんて続かない。




宗はいつものように裁縫をしていて、私はそれを眺めているだけ。





「気が散るから、見るのは止めたまえ」

『…昔さ、よくこうして宗が裁縫してて、私が隣で眺めてて怒られてたっけ。懐かしいな…何も変わってない』

「そんなこと、覚えてないのだよ」

『私がミシンに近づくと、危ないからって怒ってきてミシンより宗の方が怖かったんだから』

「それはお前が危なっかしいからだろう」





あの頃から変わらず、ずっと宗は優しいままだ。

口は悪くて、無愛想でもいつも周りのために行動している優しい人。

そんな宗だから、好きになったんだ。





『ねぇ、宗』

「なんだね?」

『私、宗のことが好きなの』

「…冗談はやめたまえ」

『冗談じゃないよ。子供の頃からずっと好きだったの』





宗の目を見て、真っ直ぐ伝える。

けれど彼の目は、いつにも増して冷酷だった。





「ふざけるのはやめたまえ!」

『…宗…?』

「君は自分の立場をわかっているのか?僕は君とそうなることを少しも望んではいない」

『それはわかってる!だから、』

「わかっていないから言ってるのだよ!僕は前から君の気持ちに気づいていた」

『…どういうこと?』

「でも言わなかったのは君が僕に伝えなかったからだ。だが一度言ってしまえばもう終わりだ」

『違う、そういうことじゃなくて!』

「僕の愛するValkyrieに私情を挟んでほしくないのだよ。君はもうValkyrieに必要ない」





なんでこんなことになってしまったんだろう。

ただ、伝えようと思っただけなのに、

伝えることすら許されないのか。




私がこの人に恋をした時点で終わりだったのか。





「部外者は即刻立ち去れ!」

『…ッ……ごめん』





勢いよくドアを開けると、ちょうどみかとすれ違った。





「えぇ、ちょ!A姉ぇなんで泣いてるん!?」





返事もできずに走り去る。

辛い、苦しい。




私のたった一言で、

私のたった一つの居場所を失ってしまった。





とうとう言われてしまった。

「必要ない」と。





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作者名:咲那 | 作成日時:2019年4月1日 22時

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