通勤バスの隣人（向井康二） ページ21
毎朝同じ時間に起きて、同じ時間に家を出て、同じ時間のバスに乗り、出勤する。
仕事も毎日同じようなことの繰り返しで刺激も何もあったもんじゃない。
仕事を終わらせたらまたバスに乗って帰る。
毎日同じ。
退屈な日々。
そんな風に思っていた。
数ヶ月前までは。
数ヶ月前のある日、いつもと同じようにバスに乗ると、二つ先の停留所から始めて見かける男の子が乗ってきた。
なんだか大きめの鞄を持っていて、大変そうだなと思った。
空いているのが私の隣だけだったから私の隣へ座ろうとして、その大きな鞄を気にしながら座ってきたのだけど、鞄が大きすぎて座る前に鞄が私にぶつかった。
まぁしょうがない、と私は特に気にしなかったけど、その彼は違った。
康「うわぁ、すんません！ほんまに！痛くなかったです？」
焦ったように私の顔を確認する関西弁の男の子。
「大丈夫ですよ。お気になさらず。」
私がそういうと、ほんますみません、ともう一度謝罪の言葉を口にして座り直した。
そして私が降りる一つ前の停留所で降りて行った。
バスを降りて、大きな荷物鞄をしっかりと持ち直す彼を見て、頑張れ青年、と心の中でエールを送った。
その次の日、再び彼は同じ場所から乗ってきた。
乗ってくる人を見てしまう癖がある私は彼とがっつり目が合った。
すると彼はあ！と嬉しそうな顔をして私の隣へやってきた。
康「今日も隣ええですか？」
「ええ、どうぞ。」
康「お姉さんいつもこのバスですか？」
「はい、基本的には毎日同じです。」
康「俺は最近奈良から出てきたんですけど、これからは仕事で毎日このバス乗るから一緒ですね！」
「そうなんですね。今日は鞄、小さいですね。」
彼が乗り込んできた時から思っていたことをつい言ってしまった。
康「昨日初出勤やったんで、持ってくものとかも多くて…これからは基本今日くらいの荷物です！」
「昨日大変そうだなって思ってました。」
康「いやほんまに昨日は職場着くまでに肩とか腕とかいかれるかと思いました。」
彼は終始にこやかに話す。
康「あ、俺向井康二って言います。お姉さんのお名前教えてもらえませんか？」
「幸村Aです。」
康「Aさんやね！同じバス仲間として仲良ぉしてください！」
バス仲間とは？と思ったところで彼が降りる停留所に。
向井さんはほなまた、と言って降りて行った。
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作者名：柊李 | 作成日時：2023年2月13日 22時
