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過去編(第四章) ページ26

迅悠一side





もう何度目か分からない篠田隊の単独遠征が発表された

ふたつの未来が視えた俺は複雑な気持ちで本部の廊下を歩いていた

きっと未来は変わらない

だから遠征までの数日間をどう過ごすかどう過ごさせるか

そんなことがずっと頭の中を回っていた



何となくラウンジに向かうと人目を引く隊服を見つけた

オフホワイトのロングジャケットは暗い色の隊服の中に混じるとよく映える

いつの間にか俺を追い越しそうなほど成長したソイツの名前を呼ぶと茶髪頭を揺らして振り返った




「迅さん 珍しいですね」

「まーね 優雅は何してんの?」

「遺書を書いてました」




その言葉を聞いて納得した俺は優雅の向かい席に腰を降ろした

遺書だなんて聞くと大抵の人は驚くかもしれないがA級上位隊員にもなれば珍しい話ではない

ましてや特殊部隊の篠田隊となれば遠征に行くたび書かなければならないわけだから慣例行事のようなものなんだろう


男子高校生にしては読みやすい字を綴る優雅の遺書を覗き見した

在り来りな文章が並んでいるだけで感動的な言葉などない

分かってはいたが少しつまらないと思った




「今日は一人?」

「はい Aは個人防衛任務なんで」

「お前らが一緒じゃないと変な感じだな」

「それ自分でも思いました」




「いつも一緒なんで」と笑いながら言う優雅

実質ボーダーでペアランク戦みたいなもんが存在したらAと優雅がNo.1になるだろう

それくらい相性もいいし互いの攻撃のタイミングを理解しているよく出来たペアだ


だけどその二人を見ていれるのもあと数日

今回の単独遠征で篠田隊の隊員は恐らく全員亡くなってしまう

こんな適当に書いている遺書が皮肉にも仕事をしてしまうというわけだ


遺書を書き終えた優雅は白い封筒に紙を仕舞いジャケットの内ポケットに入れた

それから俺の瞳を真っ直ぐ捉えた

知的で冴えたその目はAとは違う独特な雰囲気があって思わず息を飲んだ




「迅さんが俺に話しかけるってことは何か用があるんですよね?話してください」

「…相変わらず理解が早いな」

「ありがとうございます」

「今のは褒めてないよ」




そう言うと「分かっています」と優雅は笑った

ここじゃ人に聞かれる可能性がある

情報漏洩は避けなければいけないということは優雅も重々承知している

俺は優雅と共に人気の少ない廊下に出た

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弓月有無%(プロフ) - コメント失礼致します!!描写力が凄くて過去編まで来て思わず悲涙?落涙してしまいました、ストーリーも迚も読みやすく面白かったです!また気が向いたら更新して下さると嬉しいです、他作品も拝読させて頂きます。無理のない程に頑張って下さい是から応援しております (4月27日 20時) (レス) @page39 id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 更新ありがとうございます!嬉しいです!! (2022年10月16日 22時) (レス) id: 88c8eec9ab (このIDを非表示/違反報告)
おと(プロフ) - 更新してくださり本当にありがとうございます!!めちゃくちゃうれしいです涙 (2022年9月27日 19時) (レス) @page33 id: c4a16c735a (このIDを非表示/違反報告)
仔犬(プロフ) - 続き楽しみにしてます! (2022年9月25日 20時) (レス) @page32 id: 8b2aa36d50 (このIDを非表示/違反報告)
moeka(プロフ) - 続きの更新がなくて寂しいです。更新して下さると嬉しく思います。待ってます。 (2022年5月30日 23時) (レス) id: e6820645c8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ばぐ | 作成日時:2020年12月2日 20時

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