第五章 ページ39
妃旗side
深呼吸して震える体を落ち着かせる
大丈夫だ 私はちゃんと生きている
その事実を確かめるように胸に手を当てた
ドクンドクンと大きく鼓動がなっている
どうやら本当は怖かったらしい
一人で死ぬんじゃないかと
もう皆に会えないんじゃないかと
また間違えてしまったんじゃないかと
「大丈夫か?」
「…三輪」
「怪我してるのか?」
首を横に振ると三輪は安心したような表情を浮かべた
いつまでも立ち上がらない私を見て状況を察してくれたようだ
何も言わずにおぶってくれた
普段の三輪からは想像できない行動に驚きながらも人の体温を感じて安心した
三輪の首に手を回して背中に顔を押し付ける
グリグリと顔を沈めると三輪の柔軟剤の匂いが鼻を掠めた
「すごく怖かった」
「…そうか」
「三輪は?」
「…」
何も答えない三輪
黙っているということは肯定の意だろう
三輪は近界民にお姉さんを殺されている
その憎しみで今日まで戦ってきている彼にとって今回の大規模侵攻はどんなものだったのだろうか
「お前が近界民に連れ去られたと聞いた時は俺だって怖かった」
「…そっか」
他人に冷たい彼が心配してくれた
それだけで十分嬉しかった
同期にボーダーに入隊してそれから共に切磋琢磨してきた
三輪がどれくらい近界民を憎んでいるのか多分私が一番知っている
彼にとって少しでもいいから大切な存在になっていたとしたら私は満足だ
「ちょっと寝ていい?」
「あぁ 勝手にしろ」
規則正しく揺れる三輪の背中と温かさ
そして安心感によって私の眠気は最高潮に達していた
重たい瞼を閉じると視界は暗転した
・
目を覚ますと冬島隊の隊室にいた
普段は当真さんが使っているソファの上
足元から誰かの寝息が聞こえる
「…真木」
すよすよと心地よさそうな寝息をたてる真木の頭を撫でるとゆっくりと目を開けた
そして私を見て目を見開いた
まるで幽霊でも見たかのような反応だ
「A!!」
「うわっ…」
ガバッと勢いよく抱きついてきた真木を受け止める
離すまいと力を込めて抱きしめてくる
相当心配させてしまったようだ
彼女にしては珍しく泣く真木の背中をポンポンと撫でていると冬島さんと当真さんもやってきた
二人とも何も言わずにただ笑ってくれた
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ばぐ(プロフ) - 海宙さん» 海宙様お久しぶりです!私もワートリ再熱して書いてしまいました笑 ありがとうございます!今日も一日頑張ってください! (2020年11月5日 5時) (レス) id: 16d499b4b1 (このIDを非表示/違反報告)
海宙(プロフ) - まって!今ちょうどワートリ再熱してるんですけど、ワートリとばぐさんとか最高すぎん?って感じです!今まだ読んで無いんですけど絶対読むので読んだらまたコメントしますね!あーー楽しみ!生きる糧にして取り敢えず明日の学校頑張ります! (2020年11月4日 22時) (レス) id: c037788408 (このIDを非表示/違反報告)
ばぐ(プロフ) - おかかのおにぎりさん» ありがとうございます!そんなふうに言ってもらえて嬉しい限りです!前々からワートリの作品を書きたいと思っていたので本当に嬉しいです!これからもご愛読よろしくお願いいたします! (2020年10月16日 5時) (レス) id: 16d499b4b1 (このIDを非表示/違反報告)
おかかのおにぎり(プロフ) - ばぐさまの作品全て読ませて頂かせてます!どの作品もとても大好きな神作者さんがとても大好きなワートリの小説を書いてくださるなんて感無量です!これからも頑張ってください!応援してます! (2020年10月15日 21時) (レス) id: 64b2331bfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ばぐ | 作成日時:2020年10月8日 20時