君のため【ワールドトリガー】

・ ページ3

妃旗side






迅さんの言葉が頭の中を木霊する

会いたくもなかった人に遭遇してしまったせいで気分は最悪だ

ブンブンと頭を降って声を掻き消す



学校帰りの私は迷わずに隊室に向かった

A02と記された部屋の扉を開けると私以外の人がいたようでソファが少し沈んでいた





「おー妃旗 今日は少し遅かったな」

「迅さんに捕まった」

「ははっ そりゃあお疲れさん」





ソファで横になっているのは当真さん

ご自慢のリーゼントは今日も健在だ



｢冬島さんは？｣と聞くと｢知らねー｣と興味無さそうに返された

遠征のことで相談したかったが別に急用じゃないので後にすることにした



自分のロッカーを開けてジャージに着替える

当真さんがいるけど気にしない

彼も今更気にしてないしそんなこと考えてる方が疲れるし時間もかかる



セーラー服を脱ぎながら当真さんが見てたテレビに視線を向ける

そこには嵐山隊が映っていた

爽やかな笑顔をしている嵐山さんは｢ボーダーの顔｣と言われているだけある

木虎も顔は可愛いし時杖や佐鳥と綾辻もテレビ映えする容姿だから人気があるのは納得できる



換装するとはいえ制服のままでは何となく嫌なので動きやすいジャージに着替えた

｢トリガーオン｣と呟いて換装する

先程まで下ろしていた髪は後ろでひとつに結われており服装も赤が主となる隊服に変わった




ソファの大半を占めている当真さんの長い足をグイグイと押して自分が座るスペースを確保する

机の上には食べかけのスナック菓子の袋

小腹が空いていたので手を突っ込んだ






「それ俺の自腹なんだけど」

「可愛い後輩のためなんだからいいでしょ」

「まーなー」





口先では文句を言っているけど実際のところ全く気にしていない当真さん

そりゃあそうだ ボーダーで支給されているお金はそれなりに良い額だからスナック菓子の一つや二つで文句をいう必要が無い



ボーッとテレビを見ているとよく知っている顔がテレビに映った

紛れもなく私だ

当真さんも｢おー｣と声を上げた



どうやら先日の防衛任務での活躍を取りあげられているようだ

自分で言うのもなんだけれど私は人並み以上に容姿が整っている

要はあれだ

自らメディア出演しなくても必然と知名度が上がってしまうのだ

けれどそれを素直に喜べない自分がいて少し複雑な気持ちになった

・→←第一章

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す