君のため【ワールドトリガー】

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太刀川慶side






廊下の向こうから何やら楽しそうな話し声が聞こえてきた

視線の先には出水と妃旗の姿

二人の手元には同じジュースがある

訓練も終わったことだし休憩がてら飲み物を買いに行っていたのだろう






「なぁお前らこれから暇？」

「え？急すぎません？」

「で どうなんだよ」






スマホを取り出してこの後予定がないか確認する妃旗

それを覗き込む出水

最近の若い奴らの距離感の近さに驚いたが特に言おうとは思わなかった






「特に用事はないよ ご飯でも行くの？」

「あぁ 俺の奢り」

「よっしゃー！！どこ行くんですか？」

「ファミレス」

「ファミレスか…」






喜んだと思ったらファミレスと聞いて肩を落とす出水

失礼な奴だな



二人はまだトリオン体のまま

もう時計の針は7時を指している

｢とりあえず着替えてこいよ｣と伝えると二人はそれぞれの隊室に戻って行った







・









「たーちかわさん」





入れ違いになるようにやってきたのは迅

相変わらずぼんち揚げを食べている

そろそろ夕飯の時間だろと心の中で呟いた






「これからどっか行くの？」

「ははっ お前全部視えてんだろ」

「まぁね 一様聞いただけ」






わざわざ妃旗と会わなくていいようにタイミングを見計らって来るあたり迅らしい



迅と妃旗の仲が悪くなってからもう少しで一年が経つ

すぐに仲直りすると思っていたけどそう簡単にはいかないようで今日まで気まずい関係が続いている

兄弟子の俺よりも迅に懐いていた妃旗にとってあの出来事は凄く苦しいものだったのだろう



空気を読んで行動できる妃旗が周りを一切気にしないほど毛嫌いしているのは迅だけ

一方 迅は諦めていないらしく時折話しかけているようだ



他人のことにそれほど興味はないけれど二人には早く仲直りしてほしいだなんて思ったりもする

その為には妃旗があの出来事を受け入れなければならない






「一緒に行くか？ファミレス」

「太刀川さんの奢り？」

「お前は自分で払え」






ヘラッと笑う迅

その表情はどことなく妃旗に似ていた


｢そうしようかな｣と答えて迅は俺の隣に腰を下ろした

初めからそのつもりだったんだろうけど






「彼奴らが死んでからもう一年か」






天井を見上げながらそう言えば｢そうだよ｣と迅が答えた

大人っていうのは大変なものだ

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