二つの炎 ページ8
『……茜、藤の花の匂袋は持ってる？』
「アルデスゥ！」
茜は私の肩へ登ると毛量のある尻尾を一振し、私の手に紫色の匂袋を落とす。
私はそれを少女に握らせ、彼女の目を見て告げる。
『鬼避けの匂袋です。これを持っていれば、鬼と鉢合わせることはありません。念のため視覚と嗅覚に長けた茜も同行させるので、貴方は先に山を降りてください』
「ゴ主人！？」
「え……で、でも、さっきのみたいな化物が集まってきてるんですよね？ この屋敷に……なら、貴方も一緒に！」
『私はここに残ります。座敷牢にはまだ、埋葬できていない男性の亡骸がある。……それに、稀血を求めてやってきた鬼達が自棄を起こせば、麓の人達があぶない。誰かがここに残って、鬼達を倒す必要があるんです』
御遺体を貪り喰われること、麓の人々が襲われること。
二つの最悪な事態を避けるためには、この山に集った鬼を全滅するしかない。
『茜、彼女を頼むね。なるべく鬼のいない道を選んで、安全な場所まで送ってあげて』
「……了解デスゥ」
「ま、待ってください！ 貴方一人では……！」
『大丈夫です。命を粗末にするつもりはありませんから。……私は表口で鬼を倒します。貴方は茜と、裏口から回って逃げてください』
私は簡潔にそう述べ、二人に背を向けて駆け出す。
「待って……、待ってよA姉……っ！！」
『狐の呼吸、参ノ型 稲荷舞』
『壱ノ型 狐火』
『弐ノ型 管狐』
鬼の個々の力量は大したことはない。
ただこうも数が多いと、どうしても体力の消費が激しくなってしまう。
息を切らしながら、次々と襲いかかってくる鬼に向けて刃を振るう。
『つぅ……っ！』
刀を降る度に、先程の座敷牢で強打した右肩に鈍い痛みが走る。
……大丈夫。
所詮は消滅しかけた鬼の悪足掻きだ。
異能の効果はもう解けているはずだし、稀血の臭いが消えるのも時間の問題。
そう自分を励ましながら、飛び掛かってきた鬼を躱して刀を振り上げる。
『壱ノ型 狐火』
「炎の呼吸、壱ノ型 不知火」
『え……っ！？』
辺りがまるで昼間のように明るく照らされる。
狐火とは桁違いの炎が周囲を包み、一瞬で鬼達の頸が切り落とされた。
突然の猛烈な光に目が眩む。
何度か瞬きを繰り返して、再び周囲の暗闇に目が慣れてきた頃。
日輪刀を構えた私の前で、炎の描かれた白地の羽織が揺れた。
「よもやよもや。まさか俺と同じ呼吸を使う隊士が現れるとはな！」
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紅いちご - 続編ですか！！楽しみに待ってますね！ (2021年11月6日 22時) (
レス) @page41 id: 0ffbfabdee (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 続編おめでとうございます！これからも頑張ってください(๑•̀ㅂ•́)و✧ (2021年11月6日 5時) (レス) @page41 id: 6b2570d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - むつき。さん» コメントありがとうございます！ 本編でもこの二人の関係性はしんどいので、今後どう夢主ちゃんと絡ませていこうか悩んでいます(苦笑)無限列車が近づいてきて精神が削られていますが、更新頑張っていこうと思います！ (2021年11月4日 22時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 冨岡さんと錆兎さんのシーンにめちゃめちゃぐっと来ました（語彙力）更新頑張ってください！ (2021年11月3日 18時) (レス) @page38 id: da60582d52 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - 匿名希望さん» ご指摘ありがとうございます！ 本当ですね！ 全然気がつきませんでした……ありがとうございます！ (2021年10月22日 22時) (レス) @page29 id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉いろは | 作成日時：2021年9月22日 15時
