【鬼滅の刃】鬼殺隊の狐は絆を紡ぐ

稀血の臭い ページ7

うねるように動き回る狐は、鬼の牙でも勢いを殺さず、その頸を刈り取った。
宙に待った頸は、膝から崩れ落ちる体の側に落下する。

『っ！』

鬼の拍手が途切れると同時に部屋が回転する異能も止まり、勢いよく格子に右肩を打ち付ける。

「だ、大丈夫、ですか！？」

『は、はい……』

私は痛みに顔をしかめながら、炭治郎の手紙に入っていたナイフを取り出す。

鬼の方を見ると、体はまだ僅かに動いていて、頸に何かを握った右腕を差し出していた。
頸はその口を動かして何かを食しているようだったが、徐々に頭の端から灰になっていく。

……最後の悪足掻き、みたいなものだったのかな？

一応警戒しながら鬼の体に近づき、その背中にナイフを突き刺す。
その瞬間、一際濃い血の臭いが辺りに広がった。

ナイフは自動的に鬼の血を吸い取り、中の硝子部分に赤黒い血を溜めていく。


炭治郎の手紙通り、突然現れた猫にナイフを預けた後。
狐の呼吸で格子を斬り、囚われていた少女を解放する。

『攫われた他の人達が何処にいるか、わかりますか？』

「み、皆、先程の化物に……」

『……そうですか』

少女に肩を貸しながら、屋敷の外を目指して歩いていたその時。

「ゴ主人、ゴ主人！ 大変デスゥ！」

『茜？』

廊下の奥から駆け寄ってきたのは、先程炭治郎への手紙を任せた茜。
風呂敷がなくなっていることから、もう炭治郎に手紙を届けて戻ってきたのだろう。
相変わらず、茜の足は速い。

「き、狐が喋ってる……！？」

『茜、どうかしたの？』

「ドウカシタノ、ジャナイデスゥ！ 何デスカコノ臭イハ！！ 稀血ノ臭イガプンプンスルデスゥ！ 山周辺ヲ彷徨イテイタ鬼ガ、コノ屋敷ヲ目指シテ集マッテルデスゥ！！」

『稀血の臭い？』

以前嗅覚のいい茜から聞いたことだが、私は稀血の人間ではないらしい。
恐らく、この少女も稀血ではないだろう。
仮にこの少女が稀血だった場合、あの鬼は真っ先にこの少女を食べていたはずだ。

なら、どうして稀血の臭いなんか……。


『……まさかっ』

重要なことを忘れていた。

鬼が引き寄せられる照久山。
その山奥の屋敷に棲んでいたのは、鬼を喰うことでその鬼の異能を手にすることができる鬼。

もし、稀血の臭いを操る類いの異能を持った鬼がいたら。
もし、先程の鬼がそんな鬼の肉片を所持していたら。
もし、あの鬼がその異能を使うことで、自分の餌となる鬼を引き寄せていたとしたら。


背筋が寒くなり、全身から血の気が引いていく。

二つの炎→←食べなくちゃ

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