私にとって ページ15
『……私って、才能ないのかなぁ』
煉獄さんの前では、決して弱音を吐かない。
けれど私だって、落ち込んだり、へこんだりすることはあるのだ。
縁側に座ってそうぼやいていると、隣に座っていた千寿郎くんは優しい声色で言う。
「そんなことないですよ。Aさんは兄の稽古についていけていますし、我流の呼吸を極めるのは本当に難しいものです。焦らずゆっくりやればいいと思いますよ」
『千寿郎くんは優しいね』
千寿郎くんは私が落ち込んでいると、いつも側で励ましてくれる。
年下に慰められるなんて、情けない。
私が手紙を片手に苦笑を浮かべると、千寿郎くんは不思議そうに私が握る手紙を見つめる。
「家族からのお手紙ですか?」
『ううん。同期の……同じ育手にお世話になった弟弟子。姉弟子がこんな情けないことになってるとは、思ってもないんだろうな』
炭治郎からの手紙によると、今晩は那田蜘蛛山という場所に向かうらしい。
道中で出会った二人の癸の隊士と、合同任務だそうだ。
未だに単独任務しかない私からすると、羨ましい限りだ。
そういえば、共に最終選別を突破したあの三人は今頃どうしているのだろう?
「……大切な人なんですね」
『え?』
「弟弟子さんのことを語るときのAさん、凄く穏やかな顔をしていました。相手のことを想う恋人のような……」
『こ……っ!? ち、違う違う! そういうのじゃないよ!』
私が大袈裟すぎる程に首と手を横に降ると、千寿郎くんはクスクスと笑う。
「Aちゃん、想い人がいるの? 可愛い〜! キュンキュンするわ! どんな殿方なの?」
『甘露寺さん、いつの間に……!?』
音もなく私達の後ろに立っていた甘露寺さんは、頬を赤らめながら口元に両手を寄せる。
『そういうのじゃなくて、何て言うか、これは……』
なんとか自分の思いを説明しようとするが、なかなかいい言葉が見つからない。
私にとって、炭治郎は……
大切な同期であり、長い間剣を交え合った弟弟子。
この想いは、意中の相手に向けるようなものではない気がする。
任務や鬼狩りの中で、炭治郎を「守りたい」「守らなきゃ」とは思わない。
それはきっと、炭治郎のことを心から信用していて、認めているから。
友達? 仲間?
似てるけど、まだ何か違う気がする。
__あえて言葉にするなら、“競争相手”かな。
炭治郎の方は、全然そんな風に思ってないんだろうけど。
137人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅いちご - 続編ですか!!楽しみに待ってますね! (2021年11月6日 22時) (レス) @page41 id: 0ffbfabdee (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも頑張ってください(๑•̀ㅂ•́)و✧ (2021年11月6日 5時) (レス) @page41 id: 6b2570d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - むつき。さん» コメントありがとうございます! 本編でもこの二人の関係性はしんどいので、今後どう夢主ちゃんと絡ませていこうか悩んでいます(苦笑)無限列車が近づいてきて精神が削られていますが、更新頑張っていこうと思います! (2021年11月4日 22時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 冨岡さんと錆兎さんのシーンにめちゃめちゃぐっと来ました(語彙力)更新頑張ってください! (2021年11月3日 18時) (レス) @page38 id: da60582d52 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉いろは(プロフ) - 匿名希望さん» ご指摘ありがとうございます! 本当ですね! 全然気がつきませんでした……ありがとうございます! (2021年10月22日 22時) (レス) @page29 id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年9月22日 15時