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真菰 ページ10

手が、右手が、ポカポカする。

右手を包む私よりも一回り大きく、角張った手。
その温もりが優しくて、心地がよくて、とても安心する。


ふいにその手が私の手を強く握った気がして、私もその手を握り返す。
ゆっくりと瞼を上げると、澄んだ水色の大きな瞳がこちらを見つめていた。

「あ、起きた」

『……っ』

花の模様が彫られた狐面を顔の横につけた少女は、そう言ってにっこりと微笑んだ。
彼女の奥では、青々とした葉や枝が生い繁っている。
どうやら私はまた木の上で横になっていて、彼女に膝枕をされているらしい。

……今日はよく木の上で昼寝をする日だな。

顔を動かすと、彼女の横に座る錆兎の姿がある。
錆兎が立ち上がると同時に右手の温もりが途絶え、私の手を握っていたのが彼だということを悟る。

「俺はアイツの所へ行く。後は任せるぞ」

「うん」

彼女は錆兎と知人のようで、彼の言葉に小さく頷いて見せる。
それを聞いた錆兎は木から飛び降りて、素早く何処かへと駆けていった。

突然知らない少女と取り残された私。
とりあえず彼女の膝から体を起こし、彼女と向き合うような形で枝の上に座り直す。

『えっと……貴方は、』

「真菰」

『え?』

「私、真菰って言うの。よろしくね」

私が名前を聞く前に、真菰は自分からそう名乗って柔らかい笑みを浮かべた。

早い自己紹介によって警戒心が解かれ、とても親しみやすいような雰囲気が真菰から伝わってくる。
何処かの誰かも、真菰のことを見習ってほしい。

私が真菰の後を続いて名前を名乗ると、真菰は自分と錆兎のことについて語りだす。

親しげな様子だったが、二人は兄妹というわけではないらしい。
孤児だった二人を鱗滝さんが育てたそうだ。

私と同じような人生を歩んできた二人に親近感を抱きながら、話を聞いていくうちに生まれた一つの疑問を真菰に問う。

『つまり、二人は私よりも先に鱗滝さんの弟子になった先輩……兄弟子みたいなものなんだよね?』

「うん」

『どうしてこの狭霧山にいるの? 鬼殺隊に入隊した後は任務で忙しくなるから、一定の場所に留まるのは難しいって鱗滝さんから聞いたことがあるけど……』

真菰は穏やかな笑みを浮かべるだけで、私の問いかけに答えることはなかった。

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紅葉いろは(プロフ) - 人見さん» コメントありがとうございます(*´∀`*)初めての小説でいろいろ不安だったので、プラス寄りの感想が貰えて嬉しいです!更新頑張ります! (2021年8月14日 20時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 面白かったです!眠っていた、という設定がすごく斬新で面白いです!ここからどういう展開になるのか楽しみです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年8月14日 18時) (レス) id: 0469953c81 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年8月14日 10時

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