羽織 ページ41
どうやら、私の任務先は炭治郎と異なるらしい。
合同任務もあると聞いてたから、もう少し炭治郎と一緒にいられるものだと思っていたけど……炭治郎とは、ここで一旦お別れという形になるようだ。
隊服に着替えるため寝室に向かった炭治郎の背中を見届けると、ふいに鱗滝さんに呼び止められる。
「A、少しいいか?」
『はい。なんでしょう?』
「これを」
鱗滝さんがこちらに差し出したのは、白い無地の羽織。
この羽織を着ていた人物を、私はたった一人だけ知っている。
『これって錆兎の……』
「……一緒に、連れていってやってくれ」
私は羽織をじっと見つめた後、深々と頷いて羽織を受け取る。
羽織にそこまでの重さはないはずなのに、それは酷く重たく感じた。
……うん。
私は、もう一人じゃない。
そう言ってくれたのは、錆兎だもんね。
別室で隊服に着替え、その上から錆兎の羽織を纏う。
今に戻ると、そこには既に着替え終わった炭治郎がいて、鱗滝さんから箱の説明を受けていた。
昼間も禰豆子ちゃんを連れて歩けるように、鱗滝さんが作った霧雲杉の箱。
岩漆というものが塗ってあり、強度も増してあるらしい。
「着替えたか」
『はい』
「っ! A、その羽織は……」
『うん。錆兎の羽織。……身に余りすぎて、私には似合わないよね』
私が苦笑すると、炭治郎は首を横に振って言う。
「そんなことない! Aによく似合ってると思うぞ」
『ふふっ、ありがとう』
日光を避けるために布団を被っている禰豆子ちゃんが、そのままずるずるとこちらに近づいてくる。
『禰豆子ちゃんとも、しばらくはお別れだね』
「むー?」
『炭治郎をよろしくね』
昨夜鱗滝さんから、禰豆子ちゃんにかけられた暗示の話を聞いた。
__全ての鬼の始祖であり、唯一人間を鬼に変える血を持った、鬼舞辻󠄀無惨の話も。
きっと炭治郎は、禰豆子ちゃんを人間に戻すために鬼舞辻󠄀無惨を探す。
それはとても過酷な道で、炭治郎も禰豆子ちゃんも、幾度も激しい戦いに巻き込まれることだろう。
……どうか生きて、二人と再会することができますように。
142人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅葉いろは(プロフ) - 人見さん» コメントありがとうございます(*´∀`*)初めての小説でいろいろ不安だったので、プラス寄りの感想が貰えて嬉しいです!更新頑張ります! (2021年8月14日 20時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 面白かったです!眠っていた、という設定がすごく斬新で面白いです!ここからどういう展開になるのか楽しみです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年8月14日 18時) (レス) id: 0469953c81 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年8月14日 10時