おかえり ページ38
玉鋼を選び、隊服を支給された後。
その場で各自解散となり、私達は別れた。
私と炭治郎は疲労した体を引きずりながら、鱗滝さんの家を目指す。
『炭治郎、額の怪我は大丈夫? 簡単な手当てしかできなかったけど……』
「あぁ。俺は長男だから、これくらいの怪我なんてどうってことない!」
『長男関係あるの?』
__私は長女だから! お姉さんだから、皆が困ってたら私が助けてあげるの!
『……』
脳裏に無邪気な子供の声が蘇る。
『肩貸すよ』
「えっ、いや、俺は長男だから……すまない」
無理矢理炭治郎の腕を私の肩に回すと、相当辛かったのか、炭治郎は素直に体を預けてきた。
鱗滝さんの家に着いたのは、どっぷりと日が沈んでからだった。
私も炭治郎も、もう立っているのがやっとな状態。
鱗滝さんの家が見えた安心感からか、一気に膝から崩れ落ちそうになる。
「ついた……」
突然、静寂に満ちた辺りに大きな物音が響く。
その音の根元は、何者かによって蹴り倒された鱗滝さんの家の扉だった。
『えっ』
「禰豆子、お前起きたのか!?」
鱗滝さんの家から出てきたのは、例の鬼になった炭治郎の妹。
炭治郎は駆け足になり、必然的に肩を貸している私も早歩きになって彼女の元へと向かう。
禰豆子ちゃんはこちらの存在に気がつくと、一目散に駆け寄ってくる。
「うわっ!」
『え、わっ!?』
炭治郎が躓き、二人でバランスを崩し前のめりになって倒れる。
「いてて……っ!」
禰豆子ちゃんは炭治郎の頭を優しく抱き締め、自分の胸へと寄せた。
炭治郎は禰豆子ちゃんを抱き締め返すと、ポロポロと涙を溢れさせる。
「お前……っ、なんで急に寝るんだよっ! ずっと、起きないでさ。死ぬかと思っただろうが!」
初めて見る、いつも前を向いていた炭治郎の泣き顔。
私がその涙に釘付けになっていると、いつの間にか鱗滝さんがこちらに近づいてきていた。
『鱗滝さん……』
鱗滝さんは私、炭治郎、禰豆子ちゃんの三人を、力強く抱き締める。
「よく、生きて戻った」
『……っ!』
生きて、帰ってこられたんだ。
異形の鬼を倒して、藤襲山の最終選別から。
今更ながらその実感が湧いてきて、目頭が熱くなっていく。
『ふっ、ぅ、あああぁぁんっ!!』
炭治郎の涙につられ、鱗滝さんの温もりに安心して。
私も、声を上げて泣き叫ぶ。
ただいま。
帰ってきたよ。
異形の鬼は倒せた。
もう安心していいよ。
錆兎、真菰、皆。
__おかえり。
142人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅葉いろは(プロフ) - 人見さん» コメントありがとうございます(*´∀`*)初めての小説でいろいろ不安だったので、プラス寄りの感想が貰えて嬉しいです!更新頑張ります! (2021年8月14日 20時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 面白かったです!眠っていた、という設定がすごく斬新で面白いです!ここからどういう展開になるのか楽しみです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年8月14日 18時) (レス) id: 0469953c81 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年8月14日 10時