鎹鴉 ページ36
その後の七日間は、長いようであっという間だった。
……なんて余裕な発言は、口が裂けても言えない。
正直何度も死にかけたし、炭治郎の嗅覚がなければ危なかったこともしばしば。
日が昇るまで油断はできないし、ずっと緊張感を持っていなければいけない。
その分、昼間は泥のように眠って。
六日目、七日目には二人とも昼間の睡眠だけでは疲れが取れなくて、交互に見張りをしながら仮眠を取ることもあった。
二人で行動していて良かったと、心からそう思った。
『……藤の花だ』
七日振りに、あの藤の花で溢れた鳥居の下に辿り着く。
最終選別開始時に見た光景と同じ。
異なる点といえば、空は澄んだ青色をしていて、眩い太陽が昇っていること。
そしてそれは、私達が最終選別を生き残ったことを示していた。
「たった五人……！？ 二十人くらいいたのに」
私達と同じように生きてここに戻ってきたのは、私と炭治郎を除いて三人だけ。
最終選別開始時にも見かけた、桃色の着物の可愛らしい女の子。
私達の中で唯一目立った怪我もなくて、相当の実力者であることが見てわかる。
「死ぬ死ぬ」とネガティブな言葉を呟いている金髪の男の子。
一見そこまで強そうには見えないけど、最終選別を生き残るだけの実力があることは確かだ。……多分。
最後は、顔に古傷がある強面の男の子。
さっきからずっと苛立った様子で、私達に目を合わせようともしない。
……炭治郎が助けた、あの男の子もいない。
これが、最終選別の過酷さなんだ。
『……』
「お帰りなさいませ」
「おめでとうございます。ご無事で何よりです」
鳥居の下にあの時の顔の良く似た二人が現れ、これからの流れを説明する。
隊服の支給や、十段階の階級。
刀ができるまでは、十日から十五日かかるらしい。
「さらに今からは、鎹鴉をつけさせていただきます」
白髪の女の子が手を叩くと同時に、何羽もの鴉が上空に現れる。
鴉(何故か雀もいるけど)は一人一羽ずつ、腕や肩に留まっていく。
「鎹鴉は、主に連絡用の鎹でございます」
『あの、すみません。私の鎹鴉だけ、いないんですけど……』
「チョット！ ココニイマスデスゥ！」
『えっ』
袴をくいくいと引っ張られ、視線を下げる。
そこには、淡い薄香色の毛並みを持つ小動物が、私の袴に噛みついていた。
『……イタチ？』
「キツネデスゥ！！」
喋ってる……。
いや、イタチも狐も本物を見たことはないんだけどさ。
鴉じゃないじゃん。
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紅葉いろは(プロフ) - 人見さん» コメントありがとうございます(*´∀｀*)初めての小説でいろいろ不安だったので、プラス寄りの感想が貰えて嬉しいです！更新頑張ります！ (2021年8月14日 20時) (
レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 面白かったです！眠っていた、という設定がすごく斬新で面白いです！ここからどういう展開になるのか楽しみです！更新頑張ってください！応援してます！ (2021年8月14日 18時) (レス) id: 0469953c81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉いろは | 作成日時：2021年8月14日 10時
