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決意の現れ ページ27

五年ぶり(感覚的には数ヶ月ぶりだが)に、山の麓にある鱗滝さんの家へ帰ってくる。
三人で囲炉裏を囲んで、鱗滝さんが作ってくれた鍋を頂いた。
久々の食事の美味しさを噛み締めた後、私は鋏で自分の髪を切る炭治郎に声をかける。

『切っちゃうの?』

「あぁ。これだけ長いと、鬼と戦う際にどうしても邪魔になってしまうからな」

『そっか。……ねぇ炭治郎。炭治郎の散髪が終わってからでいいから、私の髪も切ってくれない?』

「ええっ! 昔妹達の髪を切ったことはあるが……いいのか? Aの髪、凄く綺麗なのに」

『うん。お願い』

「Aがいいなら、構わないが……」


シャキン、シャキンと、鋏の開閉する音が耳元で鳴り続ける。
その音を聞きながら、私は炭治郎からの問いかけに首を傾げた。

「おっと……! A、危ないからあまり動かないでくれ」

『あ、ごめん。……でも、隙の糸の匂いなんて、聞いたことがない』

炭治郎は錆兎の面、もといあの大岩を切った際、その匂いを嗅ぎつけたのだと言う。
炭治郎は鱗滝さんのように鼻が利くらしいし、私にはわからない匂いにも気がつけるのかも。

……私にも、何か一つでいいから、秀でた能力があればいいのに。


「よし。もう動いてもいいぞ」

私が首を横に振ると、肩上ほどで揃えられた紫色の髪も左右に揺れる。
炭治郎に渡された手鏡を覗いてみると、印象の変わった私と視線が交わった。

髪は女の命、という言葉がある。
その意味を詳しくは知らないが、実際に失恋の痛みを忘れるために髪を切る女性もいるらしい。

彼女達の行為が「失恋の忘却」なのだとしたら、私の行為は「約束の決意」。
錆兎との約束通り、必ず最終選別を生き残って、鱗滝さんの元に帰る。
短く切り揃えられた髪は、そんな決意の現れだ。

『凄くさっぱりした感じがする……ありがとう炭治郎!』

「よかった。気に入って貰えたなら何よりだ」

炭治郎はそう笑い、私の頭を撫でる。

『……炭治郎?』

「あ、すまない! よく弟達にも、こんな風に頭を撫でていたなって……」

炭治郎は素早く私の頭から手を離し、申し訳なさげに言う。
その謝罪の言葉をぼんやりと聞きながら、私は炭治郎に撫でられた箇所に手を伸ばした。

……炭治郎の手の温もりが、まだ残ってる。
子供扱いをされたことはわかっているんだけど、なんか、嫌な気持ちにはならないんだよな。

凄く、胸がぽかぽかする。

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紅葉いろは(プロフ) - 人見さん» コメントありがとうございます(*´∀`*)初めての小説でいろいろ不安だったので、プラス寄りの感想が貰えて嬉しいです!更新頑張ります! (2021年8月14日 20時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 面白かったです!眠っていた、という設定がすごく斬新で面白いです!ここからどういう展開になるのか楽しみです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年8月14日 18時) (レス) id: 0469953c81 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年8月14日 10時

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