4歩目 ページ6
4時間目が終わる。昼食はいつもなら教室で食べるが今日は一段とクラスメイトが騒がしいし、何より今日帰ってから始まる事実をどう対処するか考えたかったので屋上へ行く。
一緒に住む話をしてから１週間。王子様と優香里さんは家の売却やら何やらで忙しく、今日から同居が始まるのだ。つまり家に帰れば王子様がいて、あの眩しい笑顔で「おかえり、兄さん」と迎えられる。家に入らずドアを閉めたいところだ。
「はぁ…………」
本日何度目か分からない溜め息を吐いて、弁当を持って立ち上がる。
階段を登り屋上の扉を開ける。裏に回って梯子を登れば給水タンクの上に到着した。ここは死角で、屋上に誰か来ても気づかれないベストスポットだ。
ボーっと景色を見ていても考えるのは今日の放課後、家に帰ってからのこと。帰りたくない………と考えているそこに、
「あ！やっぱりここにいた」
声と共に顔を覗かせたのは天宮桃華。アニメオタクでAが唯一クラスで会話をする幼馴染みだ。
「モモ」
名前が桃華。その桃からとってあだ名はモモ。昔からノリが良く人当たりもいいので周りにはいつも人がいる。なのにAにばかり構っているお人好しだ。
「今日なんかあった？ずっと溜め息ついてるでしょ」
給水タンクの上に来たモモの手にはいつものブックカバーの付いた本と弁当箱がある。ここで食べるのか。別にいいけど。
「まぁその、色々あったから」
「聞きたい！！いや待って！その色々、当ててみる！」
目を輝かせて寄ってきたかと思ったら、う〜んと唸り始めるモモ。こんな姿も昔から変わってない。数秒唸った後、モモは分かった！とAを見る。
「兄弟が出来た………とか？」
Aは目を見開いた。流石に“今回は”当たらないと思っていたのに。
モモは昔から、Aの悩み事や隠し事をピシャリと当てる。それも誰にも言ったことのないことを。
「やっぱり超能力でも持ってるよね？」
「黙秘で。ね、合ってるでしょ」
Aは驚きとほんの少しの恐怖を感じながら頷いた。超能力でないなら、毎回当てるそれは何だと言うのか。一度脳の中を調べたい。
「誰？」
Aは少し考えた。王子様と兄弟になると知られたらAの静かで目立たない学園生活は終わりを告げる。しかし、モモは一度も当てた隠し事を言いふらしたことがない。
「誰にも言わない？」
「逆に聞くけど、今まで私が言いふらしたことあった？」
「ない」
「でしょ」
モモになら、とAは重たくなる口を開けた。
「東雲蒼が、弟になる」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1057人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
埋夜冬(プロフ) - 名無しさん» 読んでいただきありがとうございます！ありますよー！蒼くんの方が高いです！そうですねぇ、大体10センチくらい差があると思っていただければ！ (2022年3月19日 7時) (
レス) id: 19b82d3da7 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 身長差とかってあるんですかね (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - お伺いしたいことがあるんですが (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 古紗雪さん» 待っててくださりありがとうございます！更新頑張りますね！もうガン見しててください(笑) (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 龍晴さん» そろそろ続編にいきますよ！そこで完結です！夢主くんと蒼くんはどうなるのか！？麗は成敗出来るのか！？モモの正体は！？乞うご期待ですよ！ (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：埋夜冬
| 作成日時：2018年12月28日 1時
