3歩目 ページ5
確かにこれから兄弟になるのであれば親密な関係になっておいた方がいい。
「何するの?」
「何って、はい」
出されたのは、王子様の手だった。こちらに向かって伸ばされている手は陶器のようだ。
「握手しましょう」
まあでも、握手くらいなら。とAも手を重ね握手した。握られた手は見た目によらず力強い。
「よろしくお願いします、兄さん」
「………よろしく」
したくないけど。と悪態を付いてからふと気付く。
「い、今!兄さんって………!」
いきなり呼ばれたらこっちの心臓が持たない。ただでさえ動悸がおかしいのに。
「え?だって兄弟になるんですよ?だから兄さん」
ね?と手を離した代わりに首をかしげる。
いや首をかしげつつ言われても “ああそうか” とはなりませんけど!?という突っ込みを言う前に、新たな爆弾が追加された。
「あら、蒼ったらもう仲良くなったの?兄さんなんて気が早いわよ」
「同じ学校で同じ委員会らしいよ。よかった。これだけ仲が良いなら安心だ」
いつの間にか話を聞いていたらしい。父と優香里はにこやかにこちらを見つめていた。
爆弾というか既に大爆発だ。主にAの心の中だが。
「実はな、慣れておくために一緒にここに住まないかと話していたんだ。ほら、二階はちょうど2つ空いているだろう?」
家は二階建てで、二階は父と母とAの部屋、あとは書斎や物置用だ。何も使っていない来客用の部屋が2つ空いているが、一緒に住むとは早すぎないか!?展開が急すぎてAは返事も出来なかった。
「それはいいですね!この家とても素敵ですし!」
賛成したのは王子様だ。いや冗談だろ?絶対王宮の方が住みやすいって。早まらない方がいいよここは庶民の家だから!!
「でも少し早すぎない?もうちょっと後でもいいのよ?」
そうですよね優香里さん!!Aは心の中で何度も頷いた。やはりこの人はいい人だ。
「大丈夫だよ。息子たちはもう仲良しだし、お互い親密になるには傍にいるのが近道だ。私は蒼くんともっと話したいしね」
なんてことだ。父は王子様の家臣になってしまった。変化球過ぎてキャッチできない。
「そう?なら、お言葉に甘えてもいいかしら」
マ ジ か よ
爆弾は生ぬるかった。これはもはやミサイルだ。Aの心は既に海底に沈んでいる。
かくして、新しい家族との同居生活が始まってしまった。
1056人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
埋夜冬(プロフ) - 名無しさん» 読んでいただきありがとうございます!ありますよー!蒼くんの方が高いです!そうですねぇ、大体10センチくらい差があると思っていただければ! (2022年3月19日 7時) (レス) id: 19b82d3da7 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 身長差とかってあるんですかね (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - お伺いしたいことがあるんですが (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 古紗雪さん» 待っててくださりありがとうございます!更新頑張りますね!もうガン見しててください(笑) (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 龍晴さん» そろそろ続編にいきますよ!そこで完結です!夢主くんと蒼くんはどうなるのか!?麗は成敗出来るのか!?モモの正体は!?乞うご期待ですよ! (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:埋夜冬 | 作成日時:2018年12月28日 1時