19歩目 ページ22
あまりにも唐突な展開だった。確かに桐島麗という権力のある女子が蒼のことを気にしないわけないのだ。かといって紹介とは何をすれば……とAは考える。名前を言う?そういえばこの前偶然見たアニメでイケメンなキャラクターが学校の女子全員の名前を覚えている、と言っているシーンを見た。蒼なら覚えていそうだ。
「ねぇ、蒼」
家に帰りゆっくりしている蒼に話しかけると、蒼はサラサラな金髪をなびかせこちらを向く。ソファーは案外距離が近くて恥ずかしい。
「何、兄さん」
「桐島麗っていううちのクラスメイト、知ってる?」
首を傾けた蒼はしばらく考える。やはり知らないか。
「桐島財閥の人?兄さんと同じクラスだったんだ」
あ、知ってるんだ。やっぱりイケメンのオプションなんだなぁ。先輩のことまで詳しいなんて。とAは冷静な頭で考えた。もうオプションで驚かない。アニメやマンガの世界のイケメンの話は蒼にあり得る話なのだ。
「その人がどうかしたの?何かされた?兄さんの怪我してる手に触ったならちょっと話し合いが必要なんだけど」
口許は笑っているのに目が笑っていない。初めて見た顔だ。このままでは蒼は勘違いをして麗と“話し合い”をしてしまうだろう。本気で怒るところは見てみたいが、あまり推奨出来そうにない。
「ち、違うよ!えっと……蒼のことが、気になってるらしくて……」
「自分を俺に紹介しろって、兄さんに言ったの?」
オブラートに包もうとしていたのに先を越されてしまった。挙げ句の果てに言われたことまで当てられ、Aは言い淀むしかなかった。
「ごめんね、兄さん。嫌な役回りさせちゃって」
蒼は言い淀んでいるAに困ったように微笑んだ。どうしてそんな顔をしているのだろうか。
「そんなことないよ!蒼が気にすることじゃないから。大丈夫」
首を振ると、蒼の顔はAだけに見せる温かいものに変わった。陶器の指先がAの髪を耳に掛ける。
「兄さんはやっぱり優しいね」
そのまま蒼は壊れものを扱うかのような繊細な手つきでAの髪を撫でた。近くて、柔軟剤の香りがして、これで蒼の顔を見たら多分、Aの脳はショートしてしまうだろう。だからキュッと目を閉じた。
びくりとしながらも拒否せず顔を真っ赤にして目を閉じるAの姿に、蒼がどれだけ悶えてるのか、Aは知らないのだ。
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埋夜冬(プロフ) - 名無しさん» 読んでいただきありがとうございます!ありますよー!蒼くんの方が高いです!そうですねぇ、大体10センチくらい差があると思っていただければ! (2022年3月19日 7時) (レス) id: 19b82d3da7 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 身長差とかってあるんですかね (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - お伺いしたいことがあるんですが (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 古紗雪さん» 待っててくださりありがとうございます!更新頑張りますね!もうガン見しててください(笑) (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 龍晴さん» そろそろ続編にいきますよ!そこで完結です!夢主くんと蒼くんはどうなるのか!?麗は成敗出来るのか!?モモの正体は!?乞うご期待ですよ! (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2018年12月28日 1時