20歩目 ページ23
桐島麗は呼び出された。放課後、帰ろうとくつ箱を開けたときに手紙が入っていたのだ。それも丁寧に「東雲蒼のことで」と最後に書いてある。麗としては行くしかないのだ。
指定された空き教室に行くと、机に誰かが座っていた。その人物に麗は顔をしかめる。
「やっときた〜!遅いよ麗ちゃん」
「私をこんな所に呼び出して何の用なの?――――――天宮桃華さん」
よっ、と声を出して机から降りた桃華の手にはいつもの本が握られていて、何故か胡散臭さは倍増している。笑顔が張り付けてある顔だ。
「教えてあげようと思ってさ。Aと東雲くんが、何であんなに仲がいいのか。気になるでしょ?」
もちろん気になっていることだ。だが、桃華が麗に教える義理はない。何か裏があるはずだ。間違いない。
「条件は?」
金か、学校内での地位か、それとも取り巻きになりたいのか。財閥令嬢の麗に対して裏がある奴は大体それだ。毅然とした態度で麗が聞くと、桃華は悪党のような笑顔を浮かべた。
「話が早くて助かるなぁ〜。条件は簡単だよ」
「簡単かどうかは私が決めるわ。早く言ってちょうだい」
にやにやと笑っていてどこに本心があるのか分からない。麗はこういうタイプは苦手なのだ。建前と本心が違いすぎて、恐ろしいと感じるから。
「条件はAを今後いじめないこと。ね?簡単でしょ?」
Aをいじめないこと?そんなことか。確かに簡単だ。楽で分かりやすい。
「そうね、楽だわ。それで、何故あの二人が仲良いのかしら?」
そう聞くと、桃華から笑顔が消えた。麗はゾッと震える。桃華の唐突な無の表情は怖すぎた。
「東雲くんとAは親同士の再婚で兄弟になる予定なの」
「…………は?」
あまりの突拍子のない言葉につい間抜けた声が出てしまった。
「だって可笑しいでしょ?あの委員会が一緒ってだけの2人が必要以上に仲が良いこと。東雲くんはAの義弟になる」
学校での会話や、あの仲良さげな雰囲気を見てみなよ。悪魔の囁きのようにねっとりと桃華はその言葉を巻き付かせた。兄弟はともかく、桃華の言う通り友達以上の何か、になったのは想像に易い。
「そこで、うまくいけば蒼くんと付き合える方法があるんだけど、やる?」
また胡散臭い笑顔に戻ったAは首をかしげる。答えなんて、分かっている癖に。
「やるわ」
麗のその返答に、桃華はこれ以上ないほど口角を上げた。それは、罠にかかった獲物を見る狩人の笑みだった。
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埋夜冬(プロフ) - 名無しさん» 読んでいただきありがとうございます!ありますよー!蒼くんの方が高いです!そうですねぇ、大体10センチくらい差があると思っていただければ! (2022年3月19日 7時) (レス) id: 19b82d3da7 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 身長差とかってあるんですかね (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - お伺いしたいことがあるんですが (2022年3月19日 3時) (レス) id: 39136fade0 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 古紗雪さん» 待っててくださりありがとうございます!更新頑張りますね!もうガン見しててください(笑) (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 龍晴さん» そろそろ続編にいきますよ!そこで完結です!夢主くんと蒼くんはどうなるのか!?麗は成敗出来るのか!?モモの正体は!?乞うご期待ですよ! (2019年2月28日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2018年12月28日 1時